『あなたと私と数字の行方』

 ゲーム画面上において、数字は必ずしも必要な物ではありません。
 例えばコンピューターゲームの場合は、グラフィックやサウンドもあるので、画面に文字や数字が出なくとも、十分に成り立つ物が多いと思います。
 また、ゲームセンターのプライズゲームなども、ぬいぐるみとアームの位置関係を、自分の感覚で理解することが緊張感を生み出し、それが面白さにつながっています。もしも位置関係が数字で表されていたら、ぬいぐるみを取ることが幾分容易になり、景品は得ることができても、プライズゲーム自体の楽しさは薄れてしまうでしょう。
 さらにアクションゲームなどでは、エネミーを攻撃すると、グラフィックとサウンドで、倒せたのかそうでないのかが、十分に分かります。プレイヤーの操作する主人公も、ダメージが増えるに従って、グラフィックを変更すれば、どのような状態なのかが分かるでしょう。
 では、ゲームにおいて、文字や数字は何のために表示されているのでしょうか。また、どういう意味を持っているのでしょうか。
 私は主に、大きく分けて、二つの意味があるのではないかと思っています。
 第一の意味は、情報の理解です。
 まず、RPGなど一つ一つの行動に、論理的に考えることが必要になるゲームは、例えば、生命力が充分であるかどうかの判断や、エネミーがどのような攻撃をしてきたか、またそれに対して、プレイヤーが有効な対応策を所持しているかどうかなど、色々と考えることが、大切になります。そういう場合において、少しの文字情報と数字情報が、画面上に出ていれば、プレイヤーは速やかに、そのゲームの情報を理解することができるのではないでしょうか。そしてそれによって、変化を受け取る時間が、短縮されることになるため、次に何をすれば良いのかを考える時間へ、素早く移行できるのです。
 つまり、素早く移行することにより、考える時間に余裕を持たせる。その結果、全体のプレイ時間が逆に凝縮され、飽きのこない一つの要素が成り立ってくるのではないでしょうか。
 ただし、シューティングゲームなど、一秒を争うゲームにおいては、文字より先に、グラフィックで位置関係を判断することが重要になります。先に触れた、プライズゲームやこのシューティングゲームは、画面に表されるべき数字を誤ると、面白さを損なってさえしまう結果にも成りかねないと思います。
 次に、情報を具体的に表すという意味があります。RPGを例にとってみると、戦闘はグラフィックを見るだけでは、判断をしかねる部分があります。どのくらい生命力が危ういのかを知るのに、グラフィックや生命力を表したメーターを見るだけでは、そこから次の行動を、具体的かつ適格に判断するには、少し乏しいのではないでしょうか。感覚的に分かることは大切なのですが、現実に自分の体に起こる変化とは違います。そういう場合に、数字情報の開示はプレイヤーにとって、とても大切なものになります。
 つまり画面上の数字は、我々の感覚器官の肩代わりを、引き受けていることになるのではないでしょうか。
 第二の意味は、ゲームの楽しみ方の幅です。
 シューティングゲームや、アクションゲームにおいて、ゲームをクリアするのが目的であれば、スコアは必要不可欠なものではありません。しかしそれらのゲームの殆どにはスコアが表示されています。これはなぜでしょうか。
 ゲームをクリアすることが最上の目的であるならば、スコアは必要ありません。しかし、そのゲームに慣れ、クリアが容易になった時、目標が無くなると同時に、プレイする緊張感もだんだんと下降していくでしょう。その時に、スコアという別の指標があれば、クリアの他に別の楽しみも用意されるのです。
 つまり、ゲームクリアに、得点という要素が加わることによって、ゲームクリアの意味が広がることになるのです。クリア自体に、スコアという幅が生まれ、ゲームの結果が、シンプルかつ明快な数字で表されることによって、同じゲームをプレイする人たちが、一つの共通した計りを持つことができるのです。共通した計りができれば、他のプレイヤーと比べあうことができる。ゲームがゲーム内だけで完結するのではなく、プレイしている時間以外にも、楽しみを持つことができるのです。点数を競い合うのは楽しいですよね。つまり、画面上の数字は、この点において、ゲームプレイを超えた働きをしているとも言えるのではないでしょうか。
 このように、画面上の数字は、実は色々な側面を持っています。数字によって生まれるインタラクティブ性と、他の人と競える競技性。言い換えれば、ゲームと、自分と、他のプレイヤーとの三角関係。その魅力が、我々の心を惹きつけて止まないのかもしれません。これから冬の本番が訪れます。休みの日に、外が寒くて出かけるのが面倒な時、長い夜の楽しみを増やしたい時、ゲームで数字と戯れて、冬を越すのはいかがでしょうか。

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