書評 『生ける屍の死 著/山口雅也』

 ニューイングランドの片田舎では、死者があいついで甦るようになってしまった。この怪現象のなかで霊園経営者の一族に連続殺人が降りかかる。次々と甦る死者たち。死者が甦る状況のなかで、なぜ殺人は犯されるのか?
霊園で世話になっているグリンは、事件のなかで自らも殺されてしまう。甦るグリン。しかし彼の身体は朽ちようとしていた。身体が朽ちるまでに、彼は事件の謎を解くことができるか?

 なんとも蟲惑的な粗筋ではないか。
 本格推理小説で提示される謎は不可解であればあるほど良いと言われる――それが論理的に解決される限りは。さて、この作品は? ――心配無用。スーパーナチュラルな状況を、作者は丁寧に構築し、スラップスティックな展開のなかで伏線を張り、その厳密なルールのなかでロジックを開陳する。実に見事に。実に、美しく。

 作者の山口雅也は一九五四年生まれ。八九年にこの作品で衝撃のデビューを果たした。この作品は九七年に刊行された『本格ミステリベスト100
1975-1994』というムックで見事第一位に選ばれている。高い評価は、本格推理小説としての強固な地盤によるものであるのは間違いない。それは、何度強調してもいいくらいだ。

 でも、ほんとうにそれだけだろうか?

 論理と言うものの強さ、精密さとこれ以上ないほどに証明する解明シーンのあと、そのあとだ。
 詳しく述べることは避けるが、僕はこのラストシーンのあまりの切なさに、一瞬、呆然としてしまった。そこに、その悲しさに、余韻に、論理のつけいる隙はないのだ――残念ながら。すべてはそこにいたる伏線だったのだと、思わずにはいられない。
 論理がいかに魅力的で、豊潤な刺激を持っていて、そして儚いかを、この一冊は教えてくれるのだ。

書誌情報=創元推理文庫(96.03)解説法月綸太郎

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