企画『ゲーム制作者にきけ!』
──今回の『回廊』特別企画は、ゲーム制作者へのインタビュー企画です。
ゲストには、ほのぼのRPG『クミとクマ』でお馴染みのゲーム制作団体タウンクタウン代表、入江ノジコさんにお越し頂いています。
ようこそおいで下さいました。
【入江ノジコ(以下、ノ)】こんにちは。
よろしくお願いします。
──こちらこそ、よろしくお願いします。
えーとそれでは、まずは簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか?
【ノ】タンクタウンというサイトとゲーム制作団体を運営しています、入江ノジコと申します。
クリエーターとしては、企画・シナリオ・プログラムなどをやっています。
──と、ひとりで何役もこなしていらっしゃるノジコさんですが、まずはゲーム制作団体タウンクタウンについて、いろいろお話を伺っていこうと思います。
タンクタウンさんには、現在約二〇名のメンバーがいらっしゃるそうですが、こういった大きな組織を運営し、さらにゲーム制作団体として有効に機能させるためには、それなりの苦労もお有りなのでは?と思うわけですが……。
【ノ】実は、苦労はあまりありません。
と言うか、そう上手く機能しているわけではなく、二〇名居るといっても、主に活動しているのは、一〇名未満です。プロジェクトも、失敗しているものもたくさんあります。
──へぇ、そうなんですか?
【ノ】ええ。
ゲーム制作というのは、そう簡単に出来るものではないので、やはり出来る人は限られてきます。それでもいいと割り切って活動すれば、そう苦労は無いですね。
もっと、皆を参加させようとか、全部のプロジェクトを成功させようとか思うと、苦労ばかりになるでしょうが。
あえて言えば、成る様になると気楽に運営していくのが、苦労しないコツでしょうか。
──なるほど。『失敗しているプロジェクトもたくさんある』というところが興味深いです。
そういえば、タンクタウンさんの共同制作のやり方は、ちょっと面白いなと感じたのですが。
普通なら、初めに作るべきゲームがあって、そのためのスタッフを募るというやり方が一般的だろうと思うわけですが、タンクタウンさんの場合は、まず最初にメンバーを募集して、メンバー同士の交流の中から作るべきゲームのアイデアが生まれたら、それを順番にプロジェクトとして立ち上げて制作していくのだと伺っています。
このようなやり方を採用していらっしゃる理由や経緯などがありましたら、教えて下さい。
【ノ】タンクタウン立ち上げ以前にも、いくつかのゲーム制作団体に関わってきましたが、どれも途中でつぶれてしまい、グループ制作の難しさを知りました。
ゲーム制作をする以前に、コミュニケーションの問題や、メンバーの能力の問題(実際に制作に参加できるだけの知識や技術、生産能力があるかどうか)などがあり、まずゲームを作る前にクリエーター同士の交流が必要だと考えました。
そこで、まず作る前に交流を、というシステムにしました。
──なるほど。たしかに、相手の実力や性格が分からない状態でいきなり共同制作をしても、上手く行くはずがないですよね。特にネットでは実社会以上に、相手のことは付き合ってみないと分からないですから。
とはいえ、そのコミュニケーション自体がネットではなかなか難しいと思うわけですが。実際、メンバー間の意志疎通などは、どういった方法で行っていらっしゃるのでしょう?
【ノ】基本的には、掲示板を中心にして運営しています。
しかし、なかなか上手くはいきませんよ。やはり、メンバー間の意志疎通は、常に問題です。
現状では、決定的な解決策は無いですね。
──では、意見の衝突があった場合は、どのように解決されているのですか?
複数の人間でひとつのゲームを作るわけですから、全員が全員、最終的に完成するゲームに対して同じイメージを持っているとは限りませんよね。作業を進めて行くうちに、大なり小なり、メンバー間でずれが生じることがあると思うのです。
そういった場合は、最終的には多数決で決めたりするのでしょうか? それとも、責任者の決定に従うとか?
【ノ】実は、タンクタウンで上手くいっているプロジェクトは、一人の人間が中心になり、他のメンバーにサポートしてもらう、という形のものです。つまり、最初から責任者がはっきりしていて、トップダウン方式で運営される形ですね。
この場合、ゲームのイメージはリーダーが持っていて、それをいかにメンバーに伝えるかが問題になってきます。
それに対して、リーダーが明確なイメージを持たず、話し合いによって、みんなでイメージを固めていくやり方は、今のところ成功していません。
やはり、「船頭多くして~」というやつで、どうしてもまとまらず、ちぐはぐな感じになりやすいですね。また、責任感が希薄になりやすく、最後まで続かないというのもあります。
その点、多数決で決めるのは良くないですね。多数決は、最も責任感を希薄にします。
──ははぁ、これは非常に頷けるお話です。いやほら、ダメな組織って、会議ばかりして、でも結局だれも責任を負わない……みたいなイメージ、ありますもんね。
やはり、中心になる人物がしっかりしている組織じゃないと上手く行かないというのは、ゲーム制作に限らず、普遍的なお話ですね。
では、『回廊』はテキストメインな雑誌ということもあって、やはりシナリオに関心が向くわけですが、ゲームのシナリオも、複数人で分担して書いていらっしゃるわけではないと。
【ノ】シナリオを複数人で書いた経験は、私個人としてはありません。
タンクタウン内で、そのような形で行われたこともありますが、うまくいきませんでした。
ゲームの内容や規模にもよりますが、基本的にシナリオは一人で書くべきだと思います。特にアマチュア作家の場合、一人で書いて作家の特徴を出していったほうがいいでしょう。
一人が書いた脚本を他の人が推敲したり、みんなでアイディアを出してそれを一人がまとめるというのも、良いと思いますが、あくまで一人で書ける人が中心に居てこそだと思います。
──なるほど、やはりそうですか。素人考えだと、「三人集まりゃ文殊の知恵」みたいな気もしてしまうわけですが、創作活動においては、むしろ「船頭多くして~」になるんでしょうね、きっと。
では、「ゲームシナリオとしてのシナリオ」という点についてはどうでしょう。
ゲームのシナリオというのは、映画のシナリオや小説などと比べて、少々特殊なのではないかと思うのです。たとえば、RPGならRPGというスタイルに即したシナリオというものがあるでしょうし……。
【ノ】本当にゲームの良さを生かしたシナリオというのは、なかなか難しいものです。理屈としては有り得ますが、現実に書こうと思うと大変ですね。プロの作品でも、これはというのは見たことが無いですし。
ただ、ゲームに合わせてシナリオを書くというのは、ゲームシナリオを書いている人なら、意識的にせよ、無意識にせよ、ある程度誰でもやっているでしょう。
例えば、プレイヤーの行動がシナリオに影響を与えるようにするとか、キャラクターの成長に合わせてシナリオを展開させていくとかです。
──なるほど。そのへんはまぁ、「可能な限り」といった感じでしょうか。
では、プログラマーやグラフィッカーなどから、シナリオに対して「こうして欲しい」などの注文が入るといったことは、あるのでしょうか?
【ノ】プログラムやグラフィックなど、他のパートからの注文や制限というのは、グループ制作には付き物ですね。その過程で摩擦もありますが、これはもう、よく話し合って調整していくしかないです。
ただ、そういった中から新しいものが生まれてきたり、刺激を与え合って向上していけるので、その辺がグループ制作の良さでもあります。
──なるほど。やはり、素人目には大変そうです。
ではそろそろ、タンクタウンさんが実際に制作されました作品についてお話を伺っていきましょう。今回はやはり代表作といえるでしょう、『クミとクマ』についてです。
『クミとクマ』といえば、まず目につく特徴としましては、まるで童話か絵本かといったほのぼのとした世界観ですよね。
そのイメージから、プレイヤーには比較的女性や子供が多いのではないかと思うのですが、そのへんは初めからねらって作られたのですか?
【ノ】コンセプトとしてはありませんでした。
作っている途中、というかもう完成間近というあたりで、女性にも受けるかもしれない、と思ったくらいです。
──へぇー、それは意外です。
【ノ】でも、実際に女性や子供のプレイヤーは、多そうです。そもそもネットでは性別も年齢も分からないので、正確には分かりませんが、印象では、感想を書いてくれる人は、男性より女性のほうが多い感じがします。
また、親子でプレイしているという人も結構居ますね。
──いいですねー。親子でプレイ出来るRPGって。
【ノ】ちなみにクミとクマのコンセプトは、「グレのキャラを生かす」でした。
女性や子供の支持を受けた理由が、グレのキャラであるなら、コンセプトはうまく実現されたということになるでしょう。
──たしかに、グレがいい味出してますよね、このゲーム。
でも、そうしたほのぼの感から、一見ライトユーザ向けの軽いゲームかと思ったら、実は非常に遊びがいのある、どっしりとしたゲームだなという印象を強く受けました。
昨今のゲームは、ともするとストーリーのスピードに引っ張られてゲームがどんどん先に進んでしまい、じっくりと町を探索するといった楽しみが味わえなかったりします。その点『クミとクマ』は、町の人や物に、ひとつひとつ話しかけたり調べたりする楽しさを大切になさっている感じがとても伝わってきました。
このへんのゲーム性とシナリオとのバランスが非常にいいと言いますか、どちらかがどちらかの足を引っ張ったり急かしたりしていないですよね。ほのぼのとした世界観すら、そのための設定ではないかと思えるくらいです。
やはり、企画段階から意識して、相当気を配られたのではないですか?
【ノ】バランスに関しては、まったく計画性はありません。これはもう、"感覚"ですね。
クミとクマは、RPGツクールで作っていますが、ツクールの場合、作ってすぐにテストプレイできますので、作りながらバランスを調整できます。
制作者が、制作の過程でバランスを感じながら調整できるというのが、ツクールのメリットですね。
──なるほど。
では、戦闘システムについては、どうでしょう?
個人的に、『クミとクマ』でもっとも舌を巻いたのが戦闘システムでした。
特別イベント戦闘というわけでもない普通の戦闘でも、パーティメンバーがばんばん会話しますよね。あのおかげで、ものすごく「仲間と戦っている」気分を味わうことが出来ました。
あのアイデアは、どういったところから出てきたのでしょう?
【ノ】さっきも言いましたが、クミとクマのコンセプトは、『グレのキャラ』です。戦闘中の会話も、このコンセプトに基づいて作られています。
ヌイグルミなのに、なぜか関西弁でしゃべくるという妙なキャラを生かすために作りました。
──ということは、町の人との会話や物を調べたときのリアクションなどで、パーティメンバーがばんばん会話するのも……?
【ノ】会話が多いのも、グレのキャラを生かすためですね。もっとも、私のシナリオは、基本的に会話が多いですが。
会話は、キャラクターの個性を出す一番基本的な手段ですから、自然と多くなります。キャラクターをきちんと描けないと、良い物語は書けませんから。
──こうしてお聞きしていると、一貫して「いかにグレのキャラを活かすか?」というコンセプトで作られていることがよく分かります。そして、それが見事に成功しているという。
ユーザさんの反響を拝見していると、「感動しました」「泣きました」といった感想を寄せていらっしゃる方がとても多いのに驚かされるのですが、これもやはり、キャラクターが活き活きと魅力的に動いているからこそでしょう。
このへんの反響の大きさについては、制作者としてはどんなふうに受けとめていらっしゃいますか?
【ノ】予想以上の反応ですね。
元々、泣くタイプのシナリオではなく、面白いシナリオを目指していたものですから。
とはいえ、泣くにはそれ以前に面白いことが必要です。泣くような場面でどのくらい感動してもらえるかということは、それ以前の物語やキャラクターにどれだけ愛着を持ってもらえたかによるからです。
例えば、プレイヤーがキャラクターに愛着をもっていなければ、そのキャラが死んでも、それほど悲しくは無いでしょう。しかし、愛着をもっていれば、しばしのお別れ程度でも悲しいかもしれません。
だから、泣いてもらえたのは、愛着をもってもらえた結果かなと思います。
そういう意味では、面白いシナリオが上手く書けたのかもしれません。
──いやホントに、『クミとクマ』をプレイしていると、登場人物たちがどんどん好きになりますから。それはもう大成功でしょう。
とまぁ、そんな『クミとクマ』ですが、まだ遊んでいないという方に向けて、「ここを見て欲しい」「ここを楽しんで欲しい」といったコメントを頂けますでしょうか?
【ノ】やはり、一番見て欲しいのは、変なヌイグルミのグレですね。
あとは、あまりあわてずにのんびり世界を楽しんでほしいです。色々と仕掛けもありますから。
──ということですので、まだ遊んでいないという皆さんは、ぜひ遊んでみて下さい。面白いですから。
といったところで、そろそろ次の質問に移りたいと思います。
ノジコさんが作品を制作される上で、一番気を付けていらっしゃることや重視していらっしゃることは何ですか?
【ノ】楽しんで作ること、そして完成させることですね。
──どちらも非常に大切なことですよね。
では、表現方法として世の中にはたくさんのメディアがあるわけですが、その中で『ゲーム』というメディアで活動されていることの意味と言いますか。
ずばり、「何故ゲームなのか?」と。
【ノ】何故ゲームなのかと言えば、やはり子供の頃一番熱中したのがゲームだからですね。
特にRPGには、大きな可能性を感じました。最初に『ドラクエ』をやったとき、子供心に「これは、すごいことになる」と思いました。
しかし、未だにRPGの可能性は掘りつくされていないと感じています。もう少し、RPGの可能性を追求してみたいですね。
──ああー、そのお気持ち、とてもよく分かります。ぼくもファミコン世代で、ドラクエ世代ですから。ノジコさんと同じように、まだまだ新しい・面白いRPGを見てみたいという気持ちが強くあります。
では、そんなノジコさんの『夢』といいますか、タンクタウンとしての今後の目標みたいなものはなんでしょう?
【ノ】『夢』というと、やはりゲームを作って生活していくことですね。
具体的には、シェアウェアということになるでしょうか。タンクタウンでも、シェアウェアをやりたいと思います。
──それは楽しみです。
ぼくも、アマチュアのクリエイターの人々が、自身の創作活動で身を立てていける時代が来るといいなと常々思っているものですから、ぜひタンクタウンさんには、その道を切り開いて頂きたいです。応援しています。
といったところで、終わりの時間となりました。
それでは最後に、読者の皆さんに何かひとことお願いします。
【ノ】ありがとうございました。
タンクタウンでは、これからもたくさんゲームを作っていくつもりですので、よろしくお願いします。
──本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。本日のゲストは、ゲーム制作団体タウンクタウン代表、入江ノジコさんでした。
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