『出版業界におけるDTPのアレ』

 さて、本誌『回廊』をお読みになる方々であれば、日頃から小説や雑誌に慣れ親しんでいらっしゃるかと思います。
 今回は、そんな読書大好きっ子さんにも関係のあるDTPのお話。
 そもそもDTPとはデスク・トップ・パブリッシングの略称でございます。
 日本語に訳しますと、汎用機型印刷。
 ようするに、小説の元となる版下を一般のパソコンで製作するというものですな。
 版下というのは、コピー機で紙面を複写するさいに、ガラス台の上に乗せる原稿のような物と思っていただければよござんす。
 ちょっと昔ですと、この版下を作る作業には、電算写植機や組版機といった、特殊な専用機を使う方法が一般的でありました。
 そもそもコンピュータというのは、電子計算機というように、一つの作業に特化して作られたのが始まりでございます。
 今のように一台のパソコンに色々なソフトを入れ、複数の作業が出来るようになったのは、つい最近のことなのですよ。

 電算写植機とは、小説の版下を製作する機能に特化したコンピュータでございます。
 他のことは無理だけど、小説のことなら任せとけというエキスパートですな。
 DTPが台頭してきたとはいえ、まだ多くの出版社が、この機械を利用しております。
 しかし、こうした専用機を利用せず、一般のパソコンで版下を作ろうという出版社が増えているのもまた事実。
 専用機を使わないメリットとして、自社のパソコンで最終的な小説の形を管理して、好きな時に取り出して転用できる点があります。
 そもそも電算写植機は印刷会社が所持する機械であり、出版社に置かれることは少ないのです。
 さらに特殊な機構のコンピュータであるため、電算写植機で作ったデータを、一般のパソコンへ移すことは難しいのですな。

 自社のパソコンで小説の完成データを管理すれば、電算写植機を持たない印刷会社にデータを渡し、印刷を発注することも可能です。
 これにより、費用の安い印刷会社へ発注する選択肢が増え、場合によっては海外の印刷会社を使うことも出来るのでございます。
 以前は日本語という言語の壁に守られ、日本の印刷物は国内でしか作れませんでした。
 しかし、現在はパソコンの普及とIT技術の進歩により、国内の印刷物を中国などの工場で印刷する事例も増えております。
 こうした印刷費の削減も、出版社がDTP化に取り組む大きなメリットと言えますな。
 一方、逆にお金がかかるんじゃないの? という意見の出版社もございます。
 社内にDTP用の設備を整える費用、それを扱う人間を育てる教育費など。
 安定したシステムがある以上、新たに切り替える必要があるのか? という意見もありますな。
 電算写植機を切り捨てると、過去に電算写植機で作った小説のデータも使えなくなるのです。

 こうしたメリットとデメリットの間で、小説のDTP化をめぐる出版社の動きは、近年で活発化しております。
 出版社の事情など読者には関係ないと思われるかもしれませんが、費用が削減できれば、小説の価格にも影響いたします。
 お金に余剰が生まれれば、それを使って読者サービスを充実させることも可能なのですよ。
 たとえば、十年前の小説と現在の小説を比べても、印刷の仕上がりに大差はないでしょう。
 しかし、それを製作する現場では、常に新たな変革が求められているのございます。

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