『旧式ラジオ Vol.2』

著/遥 彼方


 最近、音楽聴いてます?
 休日は目覚し時計を八時に掛けて九時に起きます遥彼方が(あんまり関係ない)、何かいい音探してる、そこのあなたにお送りします。ラジオ番組風音楽コラム、旧式ラジオ第二弾っ!
突然ですがまずはお詫びから。本来でしたらこのコラム、『回廊』が配信される月に新譜を発表予定の
アーティストをご紹介……するはずなのですが!いやはやまずいことになりました。なにがまずいっ
て、今、六月なんです。私の住んでいる関西、ようやっと梅雨入りしたとこですよう。空梅雨ですけど
……。ともかく締め切りが早くなった関係で六月中には原稿を上げるわけですが、『回廊』第五号が実際に配信されるのは八月。当方、八月に新譜を出すアーティストがまだ把握できておりません。というわけで今回ご紹介するのは八月のアーティストではないのです。ごめんなさい!
 さてさて、では本題へと参りましょう。
 Vol.1 とは方向性を180 度変えまして、今回ご紹介するのは、繊細なインストゥルメンタルを得意とする人です。深々とした世界を音によって組み上げる稀有な才能の持ち主。聴く者をひととき幻想の中へ誘う、世界の終わりの音遣い、その名もWorld'sEnd Girlfriend。
 彼――どうも男性みたいです。ちなみに日本人――の音楽は、基本的にはエレクトロニカ/テクノに分類されるようです。音響派と呼ぶ人もいますね。
 二〇〇〇年にcurrent レーベルより1st アルバム『Ending Story』を発表。その後noble レーベルより3枚のアルバム『Farewell Kingdom』『Dream'sEnd Come True』『The Lie Lay Land』を発表して
います。他、World's end boyfriend、Wonderland falling yesterday などの変名でも作品を発表、昔はWorld's end filmmaker なんて名前でも作曲をしていたとか。多いなあ。
 でもこの人、ネーミングセンスもかなりキてるんですよね。変名群もそうですけど、楽曲でも、『Weare the massacre』だの『All imperfect love song』だの、否応無しにインスピレーションをくすぐってくれるタイトルが目白押しなんです。どうです? ちょっぴりでも、惹かれませんか?
 私は惹かれました。
家の近所にあるちっちゃなCD 屋で彼のCD を最初に見つけたとき、私の心を捕らえたのは何よりもまず「ワールズエンドガールフレンド」というその言葉の響きでした。で、買って、家帰って、プレーヤーにぶち込んで、聴いて、ががーんって。(なんじゃい)ええとつまり、いつになく衝撃を受けたわけです。
 こんな不思議で変てこでファンタジックな音楽初めて聴いたっっ! と。
 彼の音楽を構成するのは主にノイズ(耳障りな、あるいは心地良いノイズ)、ささやき、リズミカルなパーカッション、そしてストリングスやピアノが奏でるメロディ。これらが絶妙のセンスで組み合わされ、幻想に溢れた、それでいてひどく混沌とした「音の世界」を編み上げています。ブチ壊れたようなノイズと夢みたいなメロディがないまぜになったその独特の美しさは、まさにWEG 節。
 そして彼の音楽はとっても映像的なんです! アルバムを聴いていると、様々な美しいイメージが、万華鏡みたいに頭に浮かびます。聴いていたら画が浮かぶってのは、魅力的な音楽の第一条件。彼はインタビューで「風景とか映像が自分のなかではっきり見えていて、それを音楽に変換する」とも語っていますから、イメージの喚起力はどうもこの辺に由来するみたいです。その原風景がどんなものだったのか、少し気になるのですが、問いかけるのは野暮ってもんでしょうね……。イメージというと、レーベルの公式サイトでは『We are the massacre』のPVが視聴できるのですが、これが(タイトルの通りで)なかなか残酷です。流血の苦手な方はご注意を!
イチオシアルバムは3rd、『Dream's End come true』。これまたイカすタイトルですよ。夢の終わりは現実に。全四曲のミニアルバムですが、尺は五十分と決して短くはありません。なぜなら三曲目の
『All Imperfect love song』、これが実に二十五分という、クラシックの人もびっくりな長さだから。WEGのファンタジーがぎゅうぎゅういっぱいに詰まったこの楽曲には、作詞と声で七尾旅人(この人はある意味、WEG に匹敵するほどぶっ飛んだ世界観を持つシンガーソングライターかも。)が参加しています。前半は静けさ漂う(だけど時々壊れる)サックスとピアノのメロディに乗せ、「窓を開けると、そこは一面の銀世界――」と呟いているのですが、後半でその空気は一変。おもちゃ箱をひっくりかえしたようなぐっちゃぐちゃのサウンドと一緒に「あの子に、愛を」なんて、節つけて口ずさんでます。んー、こうやって書くと何かすごく変な曲みたいですが、実際すごく変な曲なんですが、でもとっても面白いんですよ。
 このアルバムは一曲一曲のインパクトが非常に強く、全体の密度もなかなかのものなので、WEG の世界に浸るにはちょうど良いんです。ただ他のアルバムと比べてみると、やっぱり飛び抜けてノイジー。ノイズの向こう側から浮かび上がる美しいメロディ、というWEG の魅力の一つが、最もわかりやすい形で顕れてる作品でもあるんですが、何かをしながら聴くのには向きません。絶対。聴いているうちに引
きずり込まれちゃいますからね。
 癒されたい時には2nd『Farewell Kingdom』をお勧め。中でもちょっとオリエンタルな空気の漂う二曲目『call past rain』、最高です。WEG には珍しい歌モノなんですけど、「遠い記憶、半透明な夢……」と、幻想的な電子音の中でしっとりと歌い上げるのは、彼のお友達のpiana 嬢。一度聞いたら耳から離れない、澄み切った歌声の持ち主です。すばらしい。声そのものにドラマがある歌い手なんて、そうそう
いるもんじゃありません。
 そんなわけで、刺激的な音楽が聴きたい方、電子音楽好きな方に! 別にどっちでも無くたって、World's end girlfriend、ぜひチェックしてみてくださいね。
 さてー! 今回もあらぬ方向へ突っ走ってみました旧式ラジオ、皆さまいかがでしたでしょうか?ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
 次は……んー、どうしようかなあ。邦楽のアーティストが二回続いたので、次あたり洋楽に目を向けてみたいと思ってます。取りあえげて欲しいアーティストがありましたら、編集部までお気軽に御連絡くださいませ。
 ではでは、この後も引き続き『回廊』をお楽しみください。今回ご紹介した音色が、あなたのお耳に合うことを祈りつつ。お相手は遥彼方でした。それでは、また!

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world’s end girlfriend
CD (2002/12/05)
ディスク枚数: 1
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