『FATES』

著/水池 亘

 赤信号を待っていると急にめまいがして、ふらりと道路に出てしまった。耳障りな警告音にハッとして右を向いたときにはもう車は目の前。あたる! そう思った瞬間に突然視界がフラッシュ。白く染まった世界の中で唐突に映像が流れはじめた。
 それは僕の半生。いたって普通な幼少時代。なんとなくすごした学園生活。くだらない受験。そして今、大学生の僕。ああ、これは走馬灯なんだと、僕はそう思った。
 でも映像はそこで終わらなかった。
 第七希望の会社に入る僕。つまらない仕事を延々と繰り返すだけの僕。とくに好きでもない女となりゆきで結婚する僕。ミスをして左遷される僕。子供に「死ね」と言われる僕。定年になってすずめの涙の退職金を受け取る僕。妻に先立たれ子供からもほっとかれる僕。だんだんボケはじめる僕。末期症状のガンで入院する僕。激痛にうなされる僕。一人っきりでひっそりと死ぬ僕。

 気がつくと僕は赤信号を待っていた。さっきまでとなんにも変わらない光景。向こうからあの車が走ってくるのが見えた。
 僕はどっちに行けばいいんだろう。
 どっちに。

『運命選択』457文字
『FATES』

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