『MIRROR』

著/ToY

 合わせ鏡の中に映る自分の姿。前、後ろ、前、後ろ。ずうっと向こうまで続いている、自分の隊列。その中の一人が微笑んでいた、気がした。
 何とはなしに、右手を思い切り上げた。鏡の中の自分達も手を上げた。こちらを向いている自分は左手を。向こうを向いている自分は右手を。一人両手を上げていた、気がした。
 次に、鏡の中の自分を触ろうとした。みんな、邪魔する様に手を伸ばしてきた。何を勘違いしているのか、一人チョキを出していた、気がした。
 ふとポケットの中に手を入れると、何か硬いものに触れた。カッターナイフのようだ。ポケットからそれを取り出して、確認しようと鏡から視線を逸らした瞬間、鏡の中の自分達が一斉に動いた気がした。その直後には、突然の焼けつくような痛みと、体の中から何かが溢れ出るような感触。

 合わせ鏡の中に映る自分の姿。前、後ろ、前、後ろ。鏡の外にいる自分は一人、床に横たわったまま。

『合わせ鏡』 391文字

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