『ONLY THE WHITE DETECTIVE KNOWS』

著/秋山真琴

 蠢く魚の鰭が海底を撫でると、闇色の土煙が狂い咲いた。蓋が退けられたことにより、遠い昔に忘れ去られていた泡沫が、海上を目指す。乾いた骨の色をした泡は、海月のように上を上を望み、その頂点で弾け飛んでいなくなる。飛沫の飛んだ先に、一艘の船が浮かんでいる。極彩色のそれから、肌色の物体が投げ捨てられる。泡沫が海底から海面まで泳いだように、重しを飲まされた肌色は、際限なく沈んでゆく。肌色は海底に達した後、何者かに導かれるように斜面を転がり落ち、海溝の中に消えていった。肌色が岩の上に落ちる。その衝撃で、岩の表面に繁っていた埃や微生物が流されてゆく。後には、悠久の古に刻まれた不気味な紋様が横たわっている。幾何学的な象形は、かつてそこで眠りに入った夢見るものを彷彿とさせる。肌色はしばらくの間、岩に寝そべっていたが、海に食われるにつれ、岩と同化していった。象形が複雑になる。絡みあい、手を繋ぎ、愛し、愛されるように、眠り、積もる土の下に隠されてゆく。
 悠久の時が流れた。
 今はもう、底で眠りに入った彼らを覚えているものはいない。

『夢の伝授者』460文字

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