『SMALL FAST』

著/霧生康平

 ある日、友人の一人が双眼鏡を持ってきた。双眼鏡がどんなものかは知っていても今まで見たことがなかったので、頼んで覗かせてもらうことにした。
 教室の端まで行って友人に向けて双眼鏡を覗き込む。するとおかしなことに友人がいつもよりずっと小さく、ずっと遠くに見えた。
「馬鹿。お前そりゃあ逆だよ」
 そう言って私を指して笑う友人の姿も、小さいせいか妙にユーモラスに感じる。面白くなった私は次々に倍率を高くしていった。その度に友人はどんどん小さくなっていく。今では私の掌ほどの大きさになっていた。
「おい、いいかげんに──」
 倍率を最大にした途端、何も見えなくなり、友人の声も途切れた。
 焦点がずれてしまったのだろうかと思い双眼鏡から目を外すと、ついさっきまでそこにいたはずの友人は消えてしまっていた。

『どんどん、どんどん』345文字
『SMALL FAST』

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