書評『愚者のエンドロール』

著/米澤穂信
角川書店・角川スニーカー文庫(2002)・角川文庫(2005)


 米澤穂信は、今年『犬はどこだ』で一般読書界でも話題になった、注目の若手ミステリ作家です。もともと、二〇〇一年『氷菓』で第五回角川学園小説大賞奨励賞を受賞し、角川スニーカー文庫からデビューした、ライトノベルの作家でした。
『氷菓』は、謎への好奇心が強く「わたし、気になります」という決め台詞の少女千反田えると、何事にも積極的に関わろうとしない省エネ少年だけども最終的に謎を解明してしまう折木奉太郎たちが、高校の古典部に入り、設立当初にあった事件の謎を解くという話です。個性的なキャラクターとほろ苦い結末の青春小説であり、日常の謎系のミステリでもあります。
 そして本作『愚者のエンドロール』は、『氷菓』に始まる「古典部シリーズ」の二作目です。物語は、学園祭のためにミステリ映画を作ったクラスで、脚本を書いた女子が倒れてしまって、映画が途中までしか出来ていないために犯人が分からなくなり、依頼された主人公の奉太郎たちが作中の犯人を推理するというものです。
 えるや奉太郎、親友のデータベースの里志、ツッコミ役の摩耶花、毎回奉太郎が事件に関わるためのお膳立てをする姉の供恵たちレギュラーメンバーに加え、ゲストキャラも良い味出しています。特にプロデューサーの入須冬実は、女子高生とは思えないリアリストぶりです。
 前作と同様に青春小説としても良いですが、ミステリをテーマにしたミステリであり、メタミステリとしても優れているのです。ミステリというジャンルの歴史やトリック論、本格ミステリ以外のさまざまな立場から見たミステリ観を元に推理が展開されますので、ミステリというジャンルについて考えてみたい全ての人にお勧めします。
 ライトノベルでありながら、上質のミステリでもあるこの作品の後、米澤穂信は東京創元社で一般向けミステリを書くことになります。一旦は離れた角川書店から、今年「古典部シリーズ」三作目の『クドリャフカの順番』が出ました。『愚者のエンドロール』も新装版で表紙が美しくなって再登場しましたので、書店で手に取ってみてはいかがでしょうか。(秋田紀亜)


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米澤 穂信 (著)
文庫: 254 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 角川書店 ; ISBN: 404427102X ; (2002/07)
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