『FLOOR』

著/水池 亘

 恋人の仕掛けた落とし穴に嵌って僕は二百五十五階層下の世界へ落ちる。闇の中でパンダが空を踊り提灯アンコウがてらてらてと笑う。提灯をもぎ取り、明かりを頼りに僕は探す。ここにだっているはずだ。足はふゅにふゅにと地を跳ね、その度にくるみが宙に舞う。
 程なく僕は見つける。するめいかのような格好をしているけれど、僕にはわかる。わかっているはずだと断定する。だからそのするめいかは彼女だ。僕は彼女の十本の足の先ひとつひとつにキスをして、それから体をひねって足を高く上げ、渾身の踵落としを食らわせる。彼女はぐゅなりと潰れ大量の真っ青な墨を吐き出しながら下の世界へすっ飛んで消える。青に染まる世界の中で、彼女が何百階層か下の世界で僕を見つけてくれるよう僕は祈る。

『階』324文字

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