『FRIDAY OF THE 13TH』

著/霧生康平

 残業から帰る途中の雑踏で私は奇妙な声を聞いた。
「十一だ」
「いや、十二だ」
 声の調子からすると極めて重要な事なのだろう。対立する二つの意見のどちらにも熱意がこもっていた。興味を引かれた私はその声がどこから響いてくるのか確かめようとしたが、雑踏の喧騒が邪魔して判らなかった。
 しかしそれから私が街のどこにいてもその言い争いが聞こえてくるようになった。全体的な印象として十一派は旗色が悪そうだ。時々泣いたり喚いたりしては十二派になだめられている。
 どうしてもその声が気になった私は、ある時声の正体を探しに出かけた。内心時間がかかるだろうと思っていたが、意外なことにそれはあっさりと見つかった。
 都会のマンホールの下、一人の男を中心に車座になっている十一人の男達。
「おお、十二人目がやってきたぞ」
 中央の男が厳かな声で告げる。彼が十二派の人間らしい。車座になった男達は皆一様に目を伏せる。すると彼ら全てが十一派なのか。
「さあ、こちらに来なさい」
 どういうわけか、私は男に逆らえなかった。私はそのまま白んでいく頭の隅でぼんやりと真相を理解した。
 ──ああ、そういえば今日は十三日だったか。

『十三人目』490文字

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