◆ 『回廊』が出来るまで、編集後記に代えて ◆


   0.はじめに
 こんにちは、オンライン文芸マガジン『回廊』の編集長、秋山真琴です。
『回廊』は二〇〇四年四月に創刊されたアマチュア文芸誌で、年に三回のペースで発行を続け、今号は創刊から二周年を迎える第七号となります。今日はこの場を借りて、私たちがどのようにして『回廊』を作っているか、説明したいと思います。

   1.全体
 メンバ専用のページというのが、編集部にはあります。そこには、意見の交換や打ち合わせなどをする場としての掲示板、原稿を提出するためのアップローダ、各原稿の進捗状況を確認するための表、編集長や各班長、各部門長から全体に連絡するためのメーリングリストなどが用意されています。
 メンバはメーリングリストや掲示板などで発表された締め切りなどの指示に従い、アップローダに原稿やプロットを提出します。提出された作品はまず、作者ひとりひとりにつく担当の編集者が見ます。例えば提出されたものが書きあがった原稿であるならば、編集者は「ここは、こうした方が面白い」であるとか「ここまで一人称なのに、ここから三人称なのはおかしい」といったアドバイスや指摘をします。提出されたものが書き途中の原稿か、プロット(荒筋のようなもの)であるならば、「物語の着地点がここならば、ここで回想シーンを挿入すると味が出る」であるとか「登場人物のイメージが掴みにくいので、もう少し序盤での描写を増やしたほうがいい」といったアドバイスや指摘をします。編集者の言を受けて、作者は書き直しをしたり、もしくは「いや、俺はこうしたいんだ」と編集者と膝を突き合わせて話しあいます。改稿、説得、反論、質問などを経て、編集者が「よし、これはもう掲載に見合うだろう」と判断したら、編集OKを出します。
 編集OKの出された作品は、次に校正を受けることになります。校正とは誤字脱字などを修正する作業であり、編集者とは異なり特定の校正者がいるわけではありません。小説担当もイラスト担当も宣伝担当も、別け隔てなく校正者となりえます。ここでも編集作業のときと同じように、作者は校正を見てくれた人が校正OKを出してくれるまで、書き直しと確認を繰り返すことになります。「これは誤字ですか?」「違います、造語です」というようなやり取りもあります。
 三人以上の校正を受けた作品は、次に校正班長の校正を受けます。校正班長は『回廊』における特別な原稿作法(半角全角の指定や、記号の取り扱い方など)を熟知しており、ここで誤字脱字の類を可能な限りなくし、また雑誌全体として半角全角や記号の使い方を統一します。
 編集OK、三人以上の校正OK、校正班長のOK、最低五つのOKを貰った作品は、最後に編集長が見ることになります。ここで編集長による厳正なチェックを受け、これに通った作品は、晴れて掲載確定原稿となり、その号の『回廊』に掲載されることになります。

   2.期間
 もう少し詳しく見ていきましょう。
 年に三回発行していると言うことは、四ヶ月周期で作っていることを意味します。編集部では、この四ヶ月を便宜上「執筆・依頼」「編集・校正」「制作・宣伝」という三つの期間に分けています。具体的に説明します。「執筆・依頼」の期間は最初の二ヶ月です。この期間中にメンバに原稿を書いてもらったり、新たにメンバを募ったり、次の号だけ限定的に参加していただけるよう依頼のメールを送ったりします。「編集・校正」の期間は次の一ヶ月です。この期間中に担当編集者が提出された原稿を読みアドバイスを与え、編集OKの出た作品を校正したり、編集長が最終的に確認したりします。「制作・宣伝」の期間は最後の一ヶ月です。この期間中に編集者は、作品を読者が読めるようなかたちにすること、つまりHTML化したり、PDF化したりします(第七号においては試験的にPDF版を休止しました)。また、座談会という場を設け、メンバにその号について歓談していただいたり、メールマガジン『雲上』編集部と協力して、作者インタビューなどの企画を行うのもこの期間です。
 三つの期間と述べましたが、これらは便宜上のもので明確に区切られているわけではありません。「執筆・依頼」の期間に原稿が書きあがってしまい、編集も校正もとんとん拍子に進み、一気に編集長OKが出てしまうこともあれば、「編集・校正」の時期に入ってから原稿が出され、急ピッチで編集や校正が進められることもあります。しかし「制作・宣伝」の期間だけは確保されていて、その直前に設定された最終締め切りに間に合わなかった作品は、原則として次号送りになります。次号送りになった原稿の他にも、様々な事情で提出されたものの、掲載には至らなかった原稿があります。毎号、掲載されることなく消えていった作品は少なくなく、恐らくは読者が思っている以上に掲載されなかった作品があります。

   3.編集
『回廊』の目星と言うと、なんと言っても各作品ごとに担当編集者がつくという点です。
 現在、小説作品の編集者として二名、超短編の編集者として一名、エッセイ・コラムの編集者として一名、計四名の編集者がいます。一応、小説作品を多く読み、自らも小説を手がけ、それなりの腕を持っている人が小説作品の編集者、超短編に造詣が深く、その筋に名を馳せている人が超短編の編集者、エッセイやコラムを好んで読み、ユーモアを解す人がエッセイ・コラムの編集者としています。
 編集者がアドバイスを出せる範囲で作品が出されることもありますが、ときにはその編集者の力量を上回る作品が出される場合もあります。そういった場合には、同じ編集者に相談を持ちかけたり、編集長の意見を聞いたり、作者本人に「私の手には負えないので、話しあいませんか?」と持ちかけることもあります。作者と編集者の関係は、決して敵と味方の関係ではなく、ひとつの作品をどのようにすればより良い作品にできるかと意見を伺ったり、相談できる相手だと思います。また、恐らくは最初の読者であろう編集者を、味方につけることができれば、その編集者はきっと作品をより良いものにするために、作者のレベルアップのために、尽力してくれることでしょう。
 とは言え、どうしても担当編集者とそりが合わない、ということもあるでしょう。そう言った場合には、編集長に相談するといいでしょう。作者からは言いにくいことを代弁したり、担当編集者を変えるなどして対処いたします。
 編集者によってその方針や考え方は、細かいところでは異なるでしょうが、基本的には「作品をより良いものにしよう」という点において共通しています。しかし、それが作者の「書きたいものを書きたい」という意思に反することがあります。編集者も作者も一歩も引かなかった場合、どちらが優先されるのか。未だ、そこまで事態が発展したことはありませんが、編集長として私が優先するのは編集者です。
 何故なら『回廊』は「アマチュアではあるが、作者に媚を売ったり、なあなあで話を進める必要のない編集者を提供する場」であるからです。もし作者が書きたいものだけを書き、誉められたいだけであるならば、ホームページを作り、親しい友人にだけ読んで貰えばいいでしょう。『回廊』は確かに「作者を繋ぐオンライン文芸マガジン」と謳い文句を掲げていますが、それは創作というある意味において孤独な作業を、共有しようという意味であって、馴れ合おうであるとか甘えあったり傷を舐めあったりしようとする意味ではありません。編集者は敵ではありませんが、最初から味方という訳でもないのです。

   4.補足
 まだ説明していない箇所を、かんたんに補います。
 まず、イラストに関しては、その性質から『回廊』ではフォローしきれていません。確かにメンバの中にはイラスト担当もいますし、その中から表紙を描く人を募ったり、扉絵や挿絵を描く人を募ったりしていますが、小説作品における編集や校正のような作業が入ることはありません。基本的には没もなく、描いていただければ掲載するというかたちになっています。
 次に、ゲスト原稿に関して。特集や企画などの一度限りの参加者や、お試しで参加する方は、ゲスト作家と呼び、編集や校正といった作業はありません。その特集や企画を担当している人間が担当編集者となり、基本的にはその編集者がメールなどで一対一の打ち合わせを行い、原稿をいただくことになります。その原稿は校正OKや校正班長OKなどを経ることなく、編集長チェックに飛び、そこでも比較的かんたんに編集長OKが出されます。半角全角の指定や、記号の取り扱い方などが、『回廊』の規則にそぐわない場合は、原稿本来の味を損なわない程度に、担当編集者が作者の許可を取って修正したり、作者に書き直していただいたりします。
 校正に関しては、前述したように特定の校正者がいるわけではなく、手の空いている人間が他の人の校正を行うことになります。そして『回廊』においては、校正班長以外で最低三人の校正を受けなくてはならないので、原稿を提出して「はい終わり」では残念ながら掲載には至れません。他の人の校正を、積極的に手伝うことで自分の校正が進むこともあります。面倒かもしれませんが、人間的な付き合いが『回廊』においては求められます。
 ここに挙げた編集や校正の手順は、一朝一夕で作られたものではないですし、また編集長である私がひとりで考えたものでもありません。創刊号の時点では、まだメンバ専用ページは存在せず、私が作者ひとりひとりとメールでやりとりして、作業を行っていました。しかし、人数が増えるにつれ、ひとりでの作業は難しくなって行き、メンバ用に掲示板を開設したり、アップローダを設置したりしました。そして編集や校正の手順は、その掲示板で議論され、メンバ大半の意見を取り入れて作ったものです。「編集長のやり方に異議あり!」と年に数回のペースで議論が始まり、様々な人の意見を聞き入れ、現状のシステムはできたのです。

   5.参加方法
 長くなりました。
 最後に『回廊』への参加方法を説明します。
『回廊』では小説担当・イラスト担当・編集担当・宣伝担当を募集しています。

 小説担当(超短編、コラム、エッセイ含む)とイラスト担当に関しては、毎年一月、五月、九月末日までに、編集部まで参加したいとの旨を伝えていただければ、その三ヵ月後に発行する号に枠を用意することができます。編集者の力量を超える作品数が集まり、枠が埋まってしまった場合は、次号送りとなってしまいますのでお早めにどうぞ。
 編集担当に関しては、毎年二月、六月、十月末日までに、編集部まで参加したいとの旨を伝えていただければ、その二ヵ月後に発行する号の編集手順を見て勉強してもらい、その次の号から編集者として作品をいくつか担当していただくことになります。編集者の仕事は、作品を読んでアドバイスするだけでなく、扉絵や挿絵を用意することも含みます。したがって装丁だけを担当したい方も、編集担当に応募できます。また、歴戦の編集者が新人作家の面倒を見て、新米編集者は大御所の作家に鍛えられると言います。『回廊』でも編集者初体験者は、一定のレベル以上の書き手を担当していただく予定です。
 宣伝担当に関しては、どのタイミングで参加されても構いません。担当する作業内容としては、持っているサイトやブログに『回廊』のバナーを張ったり、即売会に出る機会があれば『回廊』のチラシを配るなどです。
 担当に関しては号ごとに変動します。前回は小説を書いたけど今回は忙しかったから校正だけをするという人や、夏休みで暇だから色々やりますという人もいます。
 いずれの担当を希望された場合も、最初にご連絡いただいた時点で、メンバ専用ページをお知らせいたします。なお、ゲスト作家での参加を希望される方は、個別に連絡をいただければ対処いたします。

   6.最後に
 以上でかんたんにではありますが、オンライン文芸マガジン『回廊』の作り方を説明させていただきました。
 方々で言っていますが『回廊』は本気で取りかかる遊び場であり、いずれプロになる人が自らを鍛える道場であり、様々な企画やイベントを試す実験場であり、色々な人と知り合えるパーティ会場であり、そして何より、インターネット上で創作をやっている人間たちによるお祭り騒ぎです。
 そう、何よりもまず楽しまなくては。
 楽しんでいこう! ですよ。

 次号の『回廊』は八月十五日発行の予定です。小説やイラストでの参加希望者は、五月末日までに編集での参加希望者は六月末日までにご連絡いただければ幸いです。
 それでは皆さん、これにて輪舞の第七号はおしまい。
 この続きは約束の第八号――特集はの予定です。
 お楽しみに。


『回廊』編集長 秋山 真琴 拝

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