『AN EAR』

著/痛田 三

 ある生徒が窓際で生姜焼き弁当を食べていた。そこへ豚肉に紛れて人の耳がひとつ。気づかず口の中に放り込むと、コリッとした食感とともに苦い血の味が充満した。思わず吐き出す。歯型のついた耳は木目の床にべちゃっと落ちた。
 それを見た別の生徒が「そんなところで食うからだ」と大声で笑う。なにくそと耳を拾い投げつける生徒。耳はフリスビーのようにうまく回転しながら、目標物にべちゃっと張りついた。やったなと投げ返すも、今度はふにゃふにゃと蛇行しながら明後日の方向へ飛んでいく耳。
 それからしばらく耳は教室中を飛び回り、そこかしこで悲鳴や歓声を上げさせた後、昼休み終了のチャイムとともにゴミ箱へダイブを決めた。
 窓の外では遮断機の警報が鳴り止むことはなかった。


『日常の風景』322文字

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