『THE ART OF REASON』

著/痛田 三

 中では宝石がじゃらじゃら云わせているはずだった。
 埋蔵金を発掘する時のような高鳴りは、絹布みたいに細やかな肌を裂いたあたりがピークだった。それから赤黒い濡れ鼠の奔流が始まると、一時は好奇心が顔を覗かせたものの、思いの外あっさりと引っ込んでいった。
 そしてすぐに後悔が追っついた。
 脇に立てられたカメラ付きの三脚のごとく、しばしその場に立ち尽くす。視界が朦朧と閉じていくのを感じる。このまま甘美なナルシズムに浸ろうかとも思ったが、苛立ちが精神を支配し出したので、三脚を思いっ切り蹴っ飛ばすことにする。三脚とカメラは、血とカビと埃の臭いが充満した広い空間に乾いた音を響かせた。
 去り際、最後にもう一度だけそれに目をやる。青褪めたビニールシートに横たわるヴィーナス。その成れの果て。そこでようやく、芸術と呼ばれるものの中には〈虚ろ〉が詰まっているのだなと悟る。


『女神解体』378文字

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