『DIAMOND LUSH』

著/雨街愁介

――ああ、分かっているよ、キング。大丈夫。分かっている。ほら、今俺は意識も明瞭だ。頭も冴え渡っている。本当はこんな言葉残す必要なかったかもしれない。そう思いたい。でもそれはあくまで俺の……そうだ、自意識だ。キング。お前さんのために封筒にダイアモンドを入れといた。受け取ってくれ。もうすぐ俺には必要がなくなる。――そもそも、俺はどこで間違ったんだろうな? ダイアモンドを盗ったときも、初めて人を殺ったときも、親友の女房を姦ったときも、五つのときに初めてベレッタを握って盗みに参加したときも、俺ゃあ一度も間違ったことなんてしたつもりがねえ。本当だ……神に誓って……は、は、そうだ……俺には悪魔しかいねえんだった……なら、悪魔に誓って……キング、俺はここに来たのが間違いだったんじゃねえのか、と思ってる。思ってるんだ。これは本気だぜ。さもなくば――あの日だ、あの日、キング、お前が俺のことを探しに、サウサンプトンの廃工場に来たとき――そうだ、あれが俺の間違いだ。キング、俺とお前は何度も会っただろ、けれどお前は俺に何も教えてなんてくれなかったよな。でも俺は全部お前に晒したんだ。俺のすべてを見せた。教えた。ああ、せめて……教えてくれ、俺の鼓動が消える前に、さあ、聞かせてくれ。それからでいい、鉛を俺にぶち込んで、キング。キング探偵さんよ。お前の本当の名前、それを。俺に。耳元で。囁いて。俺は何度も繰り返すから。

『死とダイアモンド』601文字

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