十号記念祭インタビュー(3)

超短編部門 作品別一位 ◆ 赤井都


── 本日は超短編部門の作品別一位に輝いた、赤井都氏にお越しいただきました。よろしくお願いします。

赤井都 500字から500枚までの、愛のある幻想小説を書いています、赤井都です。このたびはどうもありがとうございます。とても名誉なことだと思っています。『回廊』では毎回、超短編が何編か掲載されていますよね。皆さんに気に入っていただけて、嬉しいです。

── 早速ですが赤井さんが「THE OTHER NIGHT OF CRIMSON MUGWORT」を書くことになった経緯を教えてください。

赤井都 まず、「ニガヨモギの夜」という超短編を書きました。それは、「500文字の心臓」トーナメントのお題で、タカスギさんと対戦しました。その対戦では敗れたのですが、その時の選評に、お題への沿い具合ということでの減点もありました。そこで、自分の書いた話を改めて読み返し、これは「ニガヨモギ」という実在する植物ではなく「クレナイヨモギ」という、想像上の未知の植物がよかろうと思い、「ニガヨモギ」の部分を「クレナイヨモギ」と書き換えて、「クレナイヨモギの夜」という作品にしました。これは『朝露1ダース』の中に収めました。「クレナイヨモギの夜」のストーリーは、「僕」が、隣の家の女の子「芽ちゃん」が救急車で運ばれるのを目撃し、「芽ちゃん」を助けようとする話です。

── 「THE OTHER NIGHT OF CRIMSON MUGWORT」には「クレナイヨモギの夜」の外伝という位置づけなのでしょうか?

赤井都 逆視点からの同じ物語です。「クレナイヨモギの夜」は、秋山さんに、回廊掲載候補としてお送りしました。その時のメールで、とても気に入ったけれど、初出ではないと掲載が難しいので、「芽ちゃん」視点で書いたらいかがでしょうか? というご提案をいただいたのでした。「ニガヨモギの夜」の書き直しが「クレナイヨモギの夜」、そのB面が「THE OTHER NIGHT OF CRIMSON MUGWORT」です。「芽ちゃん」視点なんて難しいなー、と思いながら、リクエストどおり書いたらおもしろいものが書けてしまったので、秋山さんを名編集! と思った次第です。

── 本人にも伝えておきます、喜ぶと思います。それでは、続きまして「クレナイヨモギの葉」がどういった物なのか、教えてください。

赤井都 「クレナイヨモギ」は想像上の植物で(検索をかけて、実在しないことを確かめました)、たぶん葉っぱは、恋するクリムゾン色だと思います。お好きに想像していただけばいいのですが、クレナイのヨモギですね。

── 恋するクリムゾン色ですか、素晴らしい色ですね。

赤井都 あっ、でも、自分で本編を読み返したら、「緑色が透けて」とか書いていました。と、すると、恋する胸に貼られると、クリムゾンに変色する植物かと思われます(笑)

── 変色(笑)

赤井都 胸に秘めた恋を吸い取ると、クレナイに変色するのかもしれません(笑)

── この作品に何か説明を補う点があれば教えてください。

赤井都 「芽ちゃん」と「界くん」は、すれ違いつつ、お互いを想い合っているのですが謎の老婆が登場しても、やっぱりすれ違いはすれ違いのまま。もし書き込めたら、その夜の闇の暗さみたいなのを書きたかったかな。

── それでは、次に赤井さんの創作や超短編に対する姿勢を伺いたいと思います。まずはいつから、超短編を書き始めているのでしょうか?

赤井都 ホームページの自分のプロフ欄にアクセスしました。データベースとして自分が一番参照していたりして(笑)ええと、98年に、「1000字小説バトル」というもののために、超短編を書き始めました。それまでは、100枚とか200枚とか書いていたので、1000字でもずいぶん短いなーと思っていました。500文字を書き始めたのが、04年。

── あら、2004年と言いますと、わりと最近なのですね。

赤井都 500文字になると、さらに描写が削られて。文学フリマで、「超短編マッチ箱」の皆さんと会い、今度は500文字でやってみよう! と思ったのがきっかけです。「500文字の心臓」では、印象に残る登場の仕方をしようと思い、自由題のほうにがつがつ送りました。3人の選者から2編ずつ掲載されたから、少しは覚えてもらえたかなと(笑)

── タイトル競作にはあまり応募されなかったのですか?

赤井都 実は、タイトルが先にあって、それに合わせて書くのが、ちょっと苦手かも(あんまりそういう練習は積んでいませんでした)。だから、タイトル先行の、トーナメントや、毎月のバトルでは、勝ったことがないんですよ(笑)赤井を倒したぞ! と皆に思われているかもしれないけど、ほんと、対戦するごと、皆から倒されてます。弱いんですよ(笑)

── 赤井さんは文学フリマを筆頭に様々なイベントに足を運んだり参加されていますが。その活動が広範囲に及ぶことからイベントプランナーや豆本作家としての一面もありますね。

赤井都 最近は、豆本作りに時間を吸い取られていますが……。何しろ手作りだと時間がかかって……。でも、豆本界では、まだまだ若造ですから。一瞬、世界一(笑)でも、豆本国際コンテストは、毎年開かれているので、来年には来年の受賞者が出ますし……。この話は、こんな装丁にしたい! とか、アイデアが湧いてくるんですよ。

── イベントを企画する理由はありますか?

赤井都 自分の作った本を、売りたくて、マメBOOKSなどのイベントを企画実行しています。やっていることは、本の売り場所探し、行商に変わりありません(笑)以前は、よく、オフ会で本を売るやつでした(笑)

── 創作のかたちとして、どうして小説や詩ではなく、超短編なのでしょう?

赤井都 超短編は、実は、自分で本作りをするまでは、わりと半端、と思い、あんまり積極的に評価できていませんでした。だって、投稿だとだいたい数百枚ですよね。1000字バトルでは、グランドチャンピオンになったのですが、そこから先どう、というわけでもなく、書き終わり評価され、しかしそこをデッドエンドのように思っていました。ところが、自分で本を作るようになると、そうした短いものを自由に収録でき、その本を売っていると、「超短編を読んだり書いたり、好きな人は多い」ということに気づきました。つまり、100枚の小説は雑誌掲載に向き、350枚の小説は文庫本に向き、そして、超短編は、豆本など小さな本に向く、といえるのではないかと。そして、それを求めている人がいると。そんなふうに、超短編を評価できるようになってきました。

── なるほど、読者の存在に気がついたわけですね。

赤井都 読者もいるし。書き手もいるし。ちょっと年配の方から、「最近は長い話は読めなくてねー。短いのがいいわ」と言われたこともあります。

── 実際に活動されている赤井さんがおっしゃると、説得力がありますね。

赤井都 いろんな人と会ったのが、自分の考えを形成してくれました。本を作ると、その「物」の形があるために、人と会う機会が増えましたよ。でもやはり、作ったり売ったりするには、エネルギーや時間が必要なので、書く時間が短くなっている?! と焦りもしますが、そのあたりは、外に出るのと内にこもるのとの、バランスで……。

── 豆本についてもう少し詳しく教えてください。

赤井都 豆本にすると、超短編を頁を繰って読み進むことになり、長い話を読んでいる気分になりますね。媒体によって、読書体験が変わってくる。当然のことではありながら、不思議で、おもしろいです。

── 読書体験と言えば、赤井さんはどんな作品を好んで読まれるのでしょう?

赤井都 私の本棚は、ジャンルがぐっちゃぐちゃです。以前からそうでした。親しくなった司書さんから、「あれもこれもそれも、一人で読むの?」といぶかられたことがあります。今、本棚を見ると、いい位置に立ててあるのは、ルグウィン。ダンセイニ。ピーター・S・ビーグル。ヴァージニア・ウルフ。スタージョン。尾崎翠。など(最近は昔SFに傾いてますね)。借りていて、これから読む本が、海洋ものボライソーシリーズです。いやー、でもこうして振り返ると、多様なようでいて偏ってますね。幻想SFの、わりとマイナーなほうへいっているみたい。

── よろしければ入門にオススメの作品を教えてください。

赤井都 ダンセイニ「世界の涯の物語」河出文庫、これは短い話がいっぱいで、超短編的な視点からも読めると思います。ルグウィンでは「世界の合言葉は森」がいいと思うのですが、現在アマゾンで在庫なしなんですね。

── ありがとうございます。それでは、最後に、読者の皆さんにメッセージがあればお願いします。

赤井都 えーと、こんな赤井都をこれからも読んでいただければ嬉しいです。赤井都を知った時点以前の過去作、そして次回作を読まれる、というのが、とても励みになりますので。これからもよろしくお願いいたします。

── ありがとうございました。

赤井都 今日はどうもありがとうございました。

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