十号記念祭座談会(1)

小説部門 上位入賞者座談会 ◆ キセン 痛田三 桂たたら 遥彼方 恵久地健一


── 本日は小説部門超短編部門の上位に入選しました、キセン氏、痛田氏、桂氏、遥氏、恵久地氏にお越しいただきました。よろしくお願いします。

キセン キセンです。明日から合宿ですが、まったく準備をしていません。

痛田 「グラン・グラン・ギニョール」の痛田三です。怖いものとキモイものが好物です。そしていつの間にやら回廊の編集部員。

 こんばんは。まつりの時間他、なんかいろいろ書きました桂です。萌えが好きです。萌えしかかけません。

遥 遥彼方です。気が付いたら回廊に入ってから三年経っていました。ヨーロッパのアニメーションとゴーリーの絵本と怖い話とSFが好きなので、書くものもきっとそんな感じです。

恵久地 こんばんは、恵久地健一です。『回廊』には作家で参加していますが、さいきんは編集作業もボチボチやらせていただいてます。

── まずはキセンさん、「恋敵の赤い眼鏡と最良の選択肢」を書くに当たって気をつけた点、注意した点などあれば教えてください。

キセン あのころは大学に入ったばかりでテンションが高かったのでああなったのだと思います。大学に入ってしばらくすると、現実がわかってきます。そしていまにいたる。

── でしたら、今は今で、二年生に上がった彼女らが書けそうですね。書いてみますか?

キセン エロいのでよければ。

── イラストに関してはいかがだったでしょうか?

キセン たいへん素晴らしいものでした。僕はいままでイラスト付の小説を書いたことがなかったので新鮮でした。

── 自分の書いたキャラクタが絵になって、どんな感情を抱きましたか?

キセン 不思議でしたね。作品のビジュアルイメージが自分のなかだけで完結しないというのは。

遥 恋敵の赤い眼鏡は……たしか、読んだときの一番最初の印象が、「おお、暗くもこわくも不気味くもない!」(チノアジとかエゴイマの人、という印象があったので)。女の子がとても、可愛いです。外から見ると小さいようなことでもすごく神妙に悩んでいるのとか、あるよねぇそういうことって、って、共感。

キセン 当時はまだ妄想内女子を信じていられたのれす。

恵久地 ライト系の作品はキセンさんにとっても初挑戦だったと、キセンさんと直接会って話したときに言ってましたね。

 文体から楽しいですよね。

遥 地の文における自己ツッコミも絶妙でした。

── 初挑戦にして、この完成度はキセンさんのクォリティの高さを示していますね。

恵久地 そうですね。キセンさんは独自のセンスもあるし、構成力もありますからね。

── それでは痛田さん、「グラン・グラン・ギニョール」を書くに当たって気をつけた点、注意した点などあれば教えてください。

痛田 この前、声優とユングが好きな友人から『グラン・グラン・ギニョール』の感想を頂きました。「キモイ」とひと言(笑)

── これ以上はないというぐらい的確な評ですね。

痛田 ええ、実はこういった感想を狙ってやったところもありました。しかし実際には読者をしぼるということはできません。いつも何かしら影響を受けていて、それをそのままやってしまう。しかもそのチョイスがどれもマイナーという(苦笑)

── ところでどうして、千秋楽ではなく、千穐楽なのでしょう?

痛田 芝居小屋では火事のような災害は、なんていうか、命取りだったので、「火」という字は避けられてたようです。

── ほうほう、なるほど、お詳しいですね。

恵久地 「グラン・グラン・ギニョール」を書くにあたって、痛田さんが何から影響を受けてこの作品を書いたのか知りたいですね。

痛田 本当にマイナーで申し訳ないんですが、蓮海もぐらさんの『ネコになりたい』を読んで、こういうキモイ話(褒め言葉)を一度書いてみたいなと思ったのがきっかけです。

恵久地 なるほど。

遥 何となく、インディーズの漫画みたいなイメージ、あります。読んでてすごく、絵が浮かぶ、というか<グラン・グラン

 こう、淡々とした描写が魅力です。非常に客観的な文章が面白いです。

痛田 キモイイメージばかりで恐縮です。

遥 でも、こういう文章が書けるって、かなり武器だと思いますよ。

──お次は桂さん、「まつりの時間」を書くに当たって気をつけた点、注意した点などあれば教えてください。

 まずは書く前に『ジョジョの奇妙な冒険』を全巻買い揃えました。もう、本当にまつりの時間を書くためだけに(笑)

── 桂さん、それはよくないです! 『ジョジョの奇妙な冒険』は『ジョジョの奇妙な冒険』を読むためだけに買い揃えるべきだと思います!

 そのとおりでした! ジョジョラー失格だ! がーん!

── ちなみに「まつりの時間」を読むために全巻、買い揃えるのは許されるでしょう。

 ジョジョ、普及させましょう。

── させましょう。

恵久地 ジョジョはすでに既読済みです。

痛田 お金がないので友人の家で読破しました。

 ええと、話を戻して、重視したのは作品内の「ルール」ですね。それを提示して、それに翻弄されて、その上でその「ルール」を逆手にとって敵を倒す、という。そういう少年誌的手法がやりたくて書きました。

── 「ルール」はどのようにして考案されたのですか?

 そうですね、小学生の頃にやっていたテレビアニメの、恐竜惑星とかジーンダイバーで時間を加速する装置みたいのがあったんですね。それがきっかけになってます。あとは、その装置のメリット、デメリット、弱点などからストーリーを考えて。弱点がなくては武器は映えませんからね。

痛田 以前の座談会でも言ってスルーされたのですが、時間加速の描写は『銃夢』の終盤のガリィを思い浮かべました。

 『銃夢』は未読です。ねちっこくねちっこく、と念じて書きましたけれど。

痛田 あらら、ジョジョ好きなら銃夢は十分に楽しめますよ!

 本当ですか!

遥 まつりの時間、小鳥とオーバーランの掛け合いが好きです。なんかこういう、相棒っていうか、そんな関係性に燃えます。素敵だー。

── 四番手は遥さん、ですね。「Phantasmagoria-Melancholia」を書くに当たって気をつけた点、注意した点などあれば教えてください。

遥 わりと頭の中にはっきりとしたビジュアルイメージがあったので、それをいかに表現するかというところに、気をつけたというか、苦労しました(笑)

── 平易な表現をすると、悪夢のような世界ですよね。

遥 そうですね。基本的に悪夢の話なんだと思います。「夢」が好きなんです。

── 考えてみれば、遥さんの作品には必ずと言っていいほど夢が絡んできますね。

遥 そういえば、そうなんですよねぇ……。なんか、昼間には考えもしなかったような世界が見えるのが好きです。ある種、狂気と裏表っていうか、そんなところにも惹かれます。そもそも夢ネタを書き出したのが、不思議の国のアリスを題材にしたシュルレアリズム映画を見てからなんで、多分その影響がでかかったんだろうなあと思います。それまでは普通のファンタジー書いてました。

 傾斜するようなシーンの転換は面白いと思います。それに不自然がないのがすごい。

遥 うまくいってました? よかったあ……。本当は、途中で収拾がつかなくなりそうになりました(笑)

恵久地 話の締め方がしっかりしてましたしね。冒頭に出てくる灯台のシーンを、ラストのシーンに重ねる書き方で。

遥 たしか、最初はハッピーエンドでした。編集してくださったキセンさんと相談の結果、こうなり。

痛田 ハッピーというと……?

遥 えーと、悪夢から帰還した主人公が恋人と仲直りするんです。今と百八十度違う。

── それでは回廊の真打、エグチさんの出番です。「エンジェル・ノイズ」を書くに当たって気をつけた点、注意した点などあれば教えてください。

恵久地 そうですね。主人公の女の子に拳銃を持たせるにあたって、銃の構造を調べたり、コルトローマンを持たせるか、コルトピースメーカを持たせるか悩んだり、堕胎手術の描写をどこまで書こうか悩んだり、処女膜再生手術をどう書こうか悩んだりです。特に、処女膜再生手術を小説で描写したのは初なんじゃないかと、われながら思います。

痛田 目からウロコでした。

恵久地 世の中の現象はすべて言語化可能であるをモットーに、今後も精進いたします。

 こんな感想でアレですが、母親のサネコさんが非常に萌えます。

恵久地 ありがとうございます。全国一千万人の女医ファンのために書きました。

痛田 エンジェルというか、回廊九号は全体的に女の子を救おうとして救えなかったという話が(自分も含めてですが)目立ちました。

遥 凄く……読んでいて、(良い意味で)くらぁっと酔ってしまいそうに素敵な文章です。

恵久地 ありがとうございます。遥さんを酔わせるために書きました。(テキトーだなあ……)

痛田 ユキくんならなんとかしてくれる……と思って読んでたので最後は(涙)

 思いました思いました!

恵久地 ユキくんはその後の続きがあったのですが、ページの都合とか色々と考えた結果、あそこまでしか書きませんでした。

 ひとつエグチさんにおたずねしたいことがあったのですが。エグチさんの作品は漢字を開くことが多いですよね。あれは何か、こだわりのようなものが、あるのですか?

恵久地 力(ちから)は横書きの場合、片仮名のカ(か)と混合されるため使用をさけてますし、一人(ひとり)と書く場合なども、長音記号の(ー)と混合されるため、ひとりと開いて使用しています。

 それは考えたことがなかったですね。なるほど。

── それでは最後に今後の抱負をお願いします。

痛田 私は、とにかく今書いている小説を十号に間に合わせることが目下の目標です。

恵久地 あまり自分の評価に固執はないです。『回廊』がすげえ雑誌になれば、それでいいんじゃないでしょうか。

キセン 眼の前の原稿を上げること。あとは、えーと、フランス革命本格ミステリに手を付ける。

遠野 今後の抱負。今年は『回廊』の原稿含め短編を六本書く予定があるので、それを落とさないようにします。あと、長編を書きます。新人賞も、長編で何か一つ送ります。流水大賞とか。

六門 新人賞に参戦!

 とりあえずは小国テスタの完結。

遥 地の文を磨く。より狂いつつ面白い話を目指す。旧式ラジオをなんとかする。一回は表紙をジャックする。

── どうもありがとうございました。

一同 ありがとうございました。

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