書評『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』 著/ばるぼら

 はじめてインターネットの向こうの世界を覗いたときのことをあなたは覚えているだろうか。おそらく大抵の人はまずYahoo!に繋いだのではないかと思う。
 さて、たった今に至るまでインターネットに費やした時間、はたしてあなたは「どこ」をもっとも長く見ていただろうか? 2ちゃんねるかもしれない。テキストサイトかもしれない。ブログかもしれない。たとえそれらのどこであろうとも、あなたがインターネットを介して関わった相手は、企業ではなく個人であったはずだ。この本の書名における「教科書には載らない」とはどういうことなのか。営利企業ではなく、個人が選び、動き、発言することで変化していったインターネットの歴史、それが本書が描き出すものなのだ。
 e-zine、テキストサイト、ニュースサイト、巨大掲示板、ブログ。企業の意図を超えてインターネットという場を動かしていった個人を描き続ける本書には、「歴史」そのものの魅力──人が作り出す社会が人により変化していくという、ミクロからマクロへの働きかけが生み出すダイナミクスが横溢している。そしてその歴史を紡ぐうえで、著者が示す一貫した姿勢が、本文の最後の一文に集約されている。「歴史は繰り返す」。さまざまな部分を変化させてゆきながら、「繋がるため」のコミュニティの生成と崩壊がインターネット上では繰り返されていく。
 本書の発行は二〇〇五年だ。たとえば、本書ではmixiについてはほとんど語られていない。ではなぜ、もう消費期限が過ぎようとしているこの本をあえて『回廊』で評しているのか。それはまだこの本が、届くべきところへ届いていないと思っているからだ。以下に引用するような高揚を味わったすべての人々へこの本は届くべきなのだ、たとえそれが少しだけ遅れたとしても。

『ネットの知らない世界を覗いてしまったその瞬間、Yahoo!からお気に入りのミュージシャンのファンサイトを巡るだけだったネットライフが急に色褪せて見え、知らない国のパレードの真ん中に放り出されたように、ぼんやりと立っていた自分が急に恥ずかしくなり、なんだか明日がとても待ち遠しくなった。あの感覚をもう一度体験したくて、今日も新しいサイトを探し、ウェブを徘徊している。(略)』(334Pより引用)

 願わくば、『回廊』があなたにとって、そのパレードのひとつでありますように。(基線)



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ばるぼら

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