書評『ママ・グランデの葬儀』 著/G・ガルシア・マルケス

 ガルシア・マルケスと言われると、ほとんどの人は『百年の孤独』の作家であることを思い浮かべるだろう。『百年の孤独』はそれほど強烈な印象を残す作品であった。『百年の孤独』はガルシア・マルケスの代表作と言えるだろう。だが、あえて私が『百年の孤独』でもなく、その後に続く『族長の秋』や『コレラの時代の愛』でもなく、そして新作である『わが悲しき娼婦たちの思い出』でもなく、『ママ・グランデの葬儀』を薦めるのには理由がある。私はこの作品には、ガルシア・マルケス全作品に通じるものすべてが含まれていると思っているからだ。
 私の手元にある集英社文庫版『ママ・グランデの葬儀』は短編集『ママ・グランデの葬儀』の内容に加えて、中篇『大佐に手紙は来ない』が収録されている。
 短編集『ママ・グランデの葬儀』は架空の都市マコンドを舞台にしている。ほとんどの短編がほんの些細な長さであるにも関わらず、鮮明な映像として頭の中に残っている。ガルシア・マルケス作品の凄さというのは、この点であると私は考える。どんなに短くても、印象的な場面を描いているからだ。
『大佐に手紙は来ない』は恩給を待ち続ける大佐の日々を書いたものである。簡素な筆致で書かれているため、読んでいてとても言葉に力強さを感じられた。下手に修飾語を重ねるよりもイメージがしやすいからだろう。
 私はガルシア・マルケスの作品を、おおまかに二つの種類に分けることが出来ると思っている。一つは『予告された殺人の記録』のようなリアリズムに徹する物語である。もう一つは『エレンディラ』に続く非現実要素が詰まった物語だ。本書を見てみると『大佐に手紙は来ない』は前者に、『ママ・グランデの葬儀』は後者に当てはまる。これが、私が初めに「この作品には、ガルシア・マルケス全作品に通じるものすべてが含まれていると思っている」と記した所以である。
 現在、集英社文庫版での入手が難しくなっているが、新潮社から、ガルシア・マルケス全小説ということで全集が発売されている。短編集『ママ・グランデの葬儀』と『大佐に手紙は来ない』を含む作品集『悪い時』は2007年六月刊行予定である。この機会を利用し、『百年の孤独』以降のガルシア・マルケスしか読んだことのない人は、手にとってみてはどうだろうか?(夏目陽)



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