オンライン小説書評『ビデオショップ』 著/クサカベアヤ

輝ける青春と反対の今

 ぼんやりとビデオショップの店内を物色する主人公が発見したのは、ジャケットの古ぼけた一本のビデオ。それは大学時代に撮影し、ある雑誌のコンペティション(競技会)で準グランプリに選ばれた輝ける日々の軌跡だった。
 わずか五百文字にも満たない、極めて短いショートショートである。「あ、ごめんなさい」という主人公の台詞から始まるのだが、一行目からしてなんとも表現できない「負けている感じ」に満たされている。その後も、ふらふらとビデオショップ内をさまよったり、昔の自分を発見してつい手を伸ばしてしまうのが、まざまざと思い浮かぶようなテンションの低い描写が続く。最後までこのテンションは維持されるのだが、素晴らしいのはそのリアリティだろう。読んでいるうちに感情移入が限界まで進み、まるでここに書かれているのは自分自身ではないだろうかと錯覚を覚えてしまうほどのリアリティがある。特に素晴らしいのは最後の一行だ。これはなかなか書けるものではないだろう。心して噛みしめていただきたい。(秋山真琴)

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