『A MURDER CASE OF COBALT60』

著/フルヤマメグミ

 ジェーニャはわたしを愛している。行商人の彼は、村に帰るたび珍しい物品をくれる。
 この秋、ジェーニャは鉛の箱を背負って帰ってきた。分厚い蓋を開けると、ペンダントが入っていた。銀製の鎖に、トップは青く輝く鉱石。海のようでも、空のようでもない色彩は、ジェーニャの瞳にそっくりだった。首にかけると、「綺麗だね」と褒めてくれた。
 その晩、何も告げずにジェーニャは消えた。
 数日後、身体の変調が始まった。手足が腫れ、だるくなり、何度も吐いた。数日後には、全身の皮膚が火傷のようにむけ、髪が抜け落ち爪もはがれ、下痢や血の涙が止まらなくなった。家族は医者探しに奔走した。
 ようやく都会の医者が来た時、わたしは人と思えないほど醜い姿になっていた。医者はペンダントを手に取ると、鼻息荒く叫んだ。
「これは危険な放射性物質だ!」
 医者は興奮してホウシャノウの害を語ったが、学のないわたしには何のことかわからなかった。父がジェーニャの鉛の箱の話をすると、医者は「なんて男だ」と呟いた。そしてわたしの首に手を回し、ペンダントを外した。
 やめて、返して。ジェーニャの瞳を奪わないで。
 懸命に手を伸ばすうち、力が抜けた。わたしは自分が事切れたことに気づけなかった。

『ジェーニャの青い石』516文字

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