『DO YOU KNOW WHERE THEY ARE GOING?』

著/雨街愁介

 ある日温泉から蟹が噴き出してきた。何故かズワイガニ。一番に気付いたのは旅館に泊まっていた客で、湯を覗き込んだら蟹が噴き出してきたらしい。小さな温泉町は大混乱になった。なんてったって蟹が温泉の代わりに噴き出してきたのだ。この世の終わりだ、とある番頭は呟いた。何で水でもなく煙でもなく、蟹なんだ。そのうちに噴き出してきた蟹が道路にまであふれ出した。街はまっかっか。蟹に挟まれて怪我をする人も続出した。もう我慢が出来ねえ、と旅館の番頭たちが手を組んで蟹の虐殺を始め、ある奴はトラックで、ある奴は猟銃で。街は蟹味噌で溢れた。それは一晩続き、街には蟹の死骸がうじゃうじゃと積み上げられ、番頭たちは最後の一匹を求めて街を彷徨った。それはもう、ほとんどゾンビのような有様だった。そして、朝。街は後片付けもされ、美しく蘇っていた。蟹は番頭たちの決死の努力によって、葬り去られていた。そして、子供たちが起きだす。ほとんどの子供は昨日の虐殺を知らない。知っていても子供にはその行為は冗談と化していた。学校へ向かう子供たちの中、道の上にしゃがみこんで、一人の子供が泣いていた。たった一人、泣いていた。


『蟹たちはどこかに』490文字

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