『地獄は終わらない』 (2)

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「なぁ……た、助けてくれよぉ……」

 俺が石を運こんで来るために、川へと向かう途中に呼び止められた。
 誰だと思って、見てみると俺よりも年取ったオッサンだった。
 オッサンと言っても、三十代ぐらいか?
 顔立ちは少なくてもそう見える。
 ただ髪が顔立ちより貧曾な事になっているので、余計に歳を取ってるように見える。
 ったく、このオッサンも自殺者だろうか?
 親はまだ死んでないのか、そりゃ残念だったね。
 せめて親が先に死んでたら、ここには来なかったかもしれないのにね。
 ……ん、いや待てよ。
 それはそれで、違う地獄に行くだけなのだろうか。
 もし自殺が悪い事だと定義されてるなら、どうしようもなく地獄行きだ。
 そう考えると、少しハッピーな思考が生まれる。
 もしかして、この地獄ってマシな方なんじゃないか?
 ヒャッホーイ、俺って他の奴より幸せもんだぜ。
「た、たすけて……」
 あ、忘れてた。
 オッサンは先ほどまで足を引きずりながらも立って歩いていたというのに、今では這って俺の所へと近づく。
 気持ち悪っ、こんな怪物が出てくるゲームをやった事がある気がするぞ。
「もう嫌だ……もう嫌だよぉ……、助けて……助けてくれ……。助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて」
 オッサンは、俺の足にしがみつき、必死に助けを求める。
 おいおい、何で俺に助けを求めるかな。
 俺達、同業者だぜ?
 ちなみに皮肉な言葉遊びだが、この場合の同業者の呼び方は「どうごうしゃ」な。
「ばーか、俺達は同業者だぜ? 弱者が弱者を助けられるはずないだろ」
 そう言い、俺はしがみつくオッサンを蹴って離れさせる。
 泣き狂い、オッサンは俺に罵声を浴びせる。
「こ、この鬼がっ! 悪魔! お前なんて、死んでしまえ! 死ね! 死ねぇ!」
 大きく見開かれた双眸をし、オッサンは般若のような形相で、俺に呪いをかけた。
 残念、その呪いは誰にも届かない。
 何故なら、その呪いは間違えてるからだ。
 オッサンは俺が死ぬように呪いをかけたが、それは出来ない。
 何故なら、俺は死んでるからな。

「俺は……お前とは違う……絶対、絶対、お前なんか見下してやる! この地獄から抜け出してやる!」

 何か無駄に怒り狂ってるな。
 そこまでいくと、八つ当たりだろ。
 やめてほしいなぁ、全く。
 こっちは善意で言って、善意で蹴ってやったというのに、この地獄に助けてくれる奴なんていない。だから地獄なんだ。
 正義のヒーローは存在しない。
 地獄に住むのは、罪を犯した罪人と、それを裁く鬼達だけだ。
 業に泣き苦しむ弱者と、弱者を痛みつける強者だけだ。
 オッサンは、俺が完全に無視をしてるというのに、未だに罵声を浴びせてるようだ。
 あのオッサンみたいなのはたまにいる。
 てか最初は俺もそうだった。
 同じ弱者に助けを求めて、同じ弱者に見捨てられた。
 この地獄では当たり前の事だ。
 弱者を救えるのは、強者しかいない。
 だが残念、ここにいる強者は鬼だけだ。
 オッサンがどうやって俺を見下してるのかは分からないが、早めに気付いた方がいい。
 この地獄の全てに、でなければ苦しむ時間が増えるだけだ。


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