『地獄は終わらない』 (3)

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 親よりも先に死んでしまった親不孝者は、どうやらこの地獄に来るらしい。
 地獄の名称は忘れてしまったが、その内容は忘れられない。
 だって、未だに継続中だもん。
 内容は至って簡単。
 石を七つ積み上げる事。
 石を、鬼達が作った〝自分が石を積み上げる場所〟で七つ積み上げればいい。
 それがこの地獄の内容で、この地獄から抜け出せる方法。
 これだけを聞けば、馬鹿みたいに簡単じゃないかと思えるが、だがそんな上手い話は転がってはいない。
 積み上げる石は、隕石のように重い。
 石を運んで来て、ある程度積み上げたとしても、必ず七つにはならない。
 何故なら、その前に鬼達が来て、ぶっ壊してしまうからだ。
 迷いもなく、慈悲もなく、むしろ鬼達は笑いながら、石を簡単に粉砕してくれる。
 正しく地獄の名に相応しいだろう。
 しかもこの内容で、休みはないというオチだ。
 いや正確には休みはいつでもしていいのだが、休んでる暇がないという事だ。
 もし鬼達が自分の場所へと巡回しに来た時に、石が一つも無かった場合は、鬼にぶっ飛ばされるのだ。
 物凄く強く殴られる。
 しかも死んでる身だから死ねないというジレンマ。
 正しく地獄の名に相応しいだろう。
 死んでラクになろうと思って死んだはずなのに、……あぁ、俺は一体何をしてるんだろう。

 そんなネガティブ思考しながら、俺は今日も(と言っても、時間が流れる感覚はこの地獄には無いのだが)石を運んでいた。
 その途中、懐かしい奴が俺を待ち伏せていた。

「やぁ、この前はどうも」

 そこには、この前のオッサンがいた。
 俺が蹴って見捨てた、あのオッサン……。
 あぁ面倒臭い、俺に喧嘩を申込みに来たのかな。
 本気でやったら負ける事はないと思うからいいが、石運びの邪魔はしないでくれないかなぁ。
 お前だってそんなに時間ないだろうに、ったく、これだから馬鹿は困る。
「実はね。僕、この地獄から出れる事になってね」
 だが、オッサンの口から出たのは予想外の言葉だった。
 おっとと、あまりにも予想外だったんで、思わず石を落としてしまった。
「ははっ、そんなに驚かないでくれよ。……まぁ仕方ないか、僕自身もこんな奇跡が起こるなんて思わなかったからね」
 オッサンは嬉しそうに、俺を見ながら笑い上げた。
 あぁ、どうやら、自慢してるらしい。
 何か楽しそうだな、こいつ。
「僕が鬼達に泣いて許しを請うたらね。しょうがない、お前は特別だぞって事で、助けて貰える事になったんだよ。ふふっ、人生って何が起こるか分からないね。いや、僕は死んでるから、人生って言葉は使えないか、ふはははっ」
 不細工な顔は更に歪む。
 狂気と歓喜が見事に混ざり合い、気色悪い色を作り出す。
 すごいなぁ、CGいらずの妖怪だ。
 こいつ、映画に出れるよ。
 すごい、ハリウッドからオファー来るんじゃないか?
 ……生きてれば。
「それじゃ、ただそれが言いたかっただけだから。君には感謝してるよ。だって、こんなに嬉しい気持ちになったのは、君のおかげだからね。それじゃ、さようなら。そして」
 お先に僕は地獄を抜け出すよと言い、オッサンは去って行った。
 余程、嬉しいのかスキップまでしてる始末だ。

 地獄から抜け出すか……あぁ、やっちゃったなぁ、あのオッサン。
 そう呟き、俺はまた石運びの作業をする事にした。


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