『キミとボク、仮面人間』 (3)
3
これは、彼女と初めて会った日の記憶。
初めて彼女と出会い、彼女に頬をつつかれて、彼女を前に泣き出して、そして、思わず胸の内を話した、あの夜。
「僕には仮面が見えるんだ。人が被っている嘘。本当という素顔を隠した仮面を、僕は見る事が出来るんだ」
僕はこの事は他の人間には話さない。
親にだって信じてもらえなかったのだ。
それをどうして他人などに話せるだろうか。
だけど、この日の僕はどうかしてた。
僕が今まで胸の中に仕舞っていた忌まわしき事実を、彼女に話した。
全て、彼女に話した。
もしかしたら、そのおかしい僕の行動も、運命の仕業だったのかもしれない。
「あはは、奇遇だね。同じ同じ」
自分の顔に指を指して、彼女は言った。
何の仮面も被らずに、嘘という仮面を被らずに、彼女は素顔という証拠を見せつけて、言った。
僕と同じ〝仮面を見る〟能力者。
これが、運命という言葉で言い表せないなら、他にどのような言葉を使えばいいのだろうか。
きっと僕は彼女と出会う運命にあったのだろう。
そして彼女も僕と出会う運命にあったのだろう。
運命というのは、人生を上手く生きられなかった人間達の言葉のように思われるが、それだけではない。
運命というのは、このように希望を込めた言葉としても使えるのだ。
今、夕焼けの赤を背負う彼女を前にしても、僕は思う。
これは運命だったのだと、そしてこの出会いは素晴らしいものだったと言える。
「僕、君に出会えてよかったよ」
「……何よ、いきなり」
同じベンチに座る可愛らしい少女が、応える。
いきなり意味不明な事を言ったので、困惑させてしまっただろうか、だが言いたくなったのだ。
僕がどれ程、彼女に感謝してるかを。
だから、僕は彼女に言った。
僕が今までどういう人生を送って来たかを、今まで世間に対してどういう目で見てきたかを、そしてこのままだとどうなっていたかを予想で言った。
全て、言った。
だから、感謝してると、心を込めて言った。
自分でも恥ずかしいと思うが、仕方がない。
本当に感謝してるのだ。
同じ眼を持つ者に出会えた事。
同じ苦しみを味わう者、唯一心が通じ合える友人。
僕が思いの内を全て話し終えると、彼女は嬉しそうに応えた。
「そうだね、確かにそうだね。こんな眼を持つ人が他にもいるなんて意外だよね。とても嬉しいよね。やっぱり一人ってのは悲しいからね」
その顔は笑顔だった。
笑っていた。
恐らく、以前は僕と同じでこの眼を持つ事による苦しみを背負っていたのだろう。
だがそれも、半減される。
少なくても、同じ苦しみを持つ人がいたのだ。
痛みは、分かち合う事が出来る。
「でもね、君で残念な事が一つだけあるんだよ」
「――え、それって何?」
痛みは分かち合う事が出来る。
一人が痛みを背負ったら、その痛みをもう一人も背負う。
そうすれば分かち合える。
痛みは半減し、力は湧く。
それが痛みを分かち合うという事。
友達だから、友人だから、出来る事。
「だって君も、仮面を被っているんだもん」
仮面を被らない同士で、出来る事。
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