『CLOSE THE WORLD, OPEN THE NEXT』

著/秋山真琴


 少女が抱きついているのは、しかし、人形なのだ。
 青銅色の人形は光沢を放っており、おおよそ温かみを感じさせない。けれど、少女は目をつむり、安心しきった表情で人形にその身を任せている。不気味なのは、人形も少女の抱擁にこたえるかのように、彼女の背に腕を回していることだ。人形の顔は無表情に作られているにも関わらず、その手だけは指先にいたるまで精巧に作られており、そこには人形の少女への慈しみが感じられる。
 私はそっと目もとに手をやった。目玉がごろごろと音を立てているような錯覚を覚えた。
 寝不足だろうかと思い目薬をさしてから振り返ったとき、私は息をのんだ。柱の陰に立っていたはずの警備員が人形に変わっていたのだ。紺の制服と制帽を身につけた人形は、青銅色の肌をしており、無表情だった。
 恐くなって逃げだすと館内を巡回していた職員とすれちがった。人形だった。観光客の団体も、受付の職員も、人形だった。けれど美術館を出て、街を歩く人形たちを見たとき、私は平穏を取り戻していた。思い出したからだ。皆、元々、人形だった。


『幻想絵画「邂逅」』456文字

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