『DEATH WILL CACTH UP YOU IF...』

著/秋山真琴

 雑木林が漣の音をたて、向日葵が頭を垂れる。
 すべての景色はしかし、全力で駆けるわたしの後方へと瞬時に過ぎ去ってゆく。
「ねえ、あなた! 待って、置いていかないで、わたしを見捨てないで!」
 叫び声がわたしの後ろ髪を引く。
 その声には恐れと悲しみが入り混じっており、今まさになんらかの苦難が彼女に覆いかぶさってゆくかのような鬼気迫るものがあった。救えるものなら彼女を救いたいという気持ち以上に、彼女がいかなる危機に瀕しているのかが気になった。何故なら、今まさに彼女を襲わんとしている脅威は、彼女を襲った後に、私にも噛みついてくる可能性があるからだ。出来ることならわたしは走るのをやめ、彼女を抱きしめ、彼女に降りかかろうとしている火の粉を振り払いたい。
 しかし。わたしは。振り向かない。
 目じりに浮かんだ涙の雫が、黄昏に散る。
 わたしの背後、西の空を見れば、夕闇に沈みつつある太陽を見ることができるだろう。それは地面に横たわる長い影を見れば充分に推測できる。そしてもうひとつ、わたしの足元に踊る影。長髪を振り乱し、大きな鎌を振り回している影を見れば、わたしを追いかけているのが、もはや彼女でないことは言うまでもない。

『愛しのウィルヘルミナはもういない』497文字

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