『GOOD MORNING GLORY』

著/秋山真琴

 東の空がうっすらと白みはじめる、夜明け前の、一日でもっとも静かな時間。
 その頃合いに生まれた朝靄は、夜のうちに死んでしまったひとの魂らしい。そしてそれらはもう一度、日の目を見たいという未練のためか、なかなか消えないのだという。
 噂話の真偽を確かめてやろうと、ある朝、わたしはコーヒーを手に出窓に肘をついて夜明けを待った。
 やがて、朝靄がぼんやりと漂い、地面を覆ったが、すぐに夏の朝日が昇り、朝靄は駆逐されていった。
 やはり噂話はうそだったかと溜め息をつくわたしの目の前で、静かに消えてゆくかと思われた朝靄は不思議な変化を見せた。糸がより合わさって、より丈夫な紐になるように。朝靄が集まり、凝縮しはじめたのだ。
 わたしは思わず、手元のコーヒーをこぼしてしまった。
 慌てて雑巾を取ってきて出窓のあたりを拭いているうちに、朝靄はなくなってしまっていた。
 ただ、向かいの家の、くすんだ色の電柱のした。朝顔が咲いていた。

『亡霊が宿ると咲く花の名前は』406文字

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