『鴉山鏡介の虚像限界』(2)

前章へ←


 どうやら変な夢を見ていたらしい。
 夢というか回想だろうか、ほんの半日前のことを僕は思い出していた。妙に悪質眼鏡の言葉が耳に染みついていたからか。嫌な奴だ。悪質眼鏡と僕らの中で言われている男、草月薫。
 〝人の心を覗き見ることが出来る魔物〟を遣う、魔物遣いであり、魔物遣いを狩るために制限機関に雇われた執行人たちの管理人。
 あぁ、やだやだ。あいつの顔を思い出すだけで、頭痛がしてくる。
「……」
 目の前には、先ほど天井が見えないほど吊るされていた死体があった。
 包帯でのっぺらぼうにされていたが、その奥には壮絶な悲劇と対面した顔が広がってるに違いない。普通の人間ならば、ここで声を上げたり、嘔吐したりしなきゃいけないのかもしれないが、悲しいけど、僕にはそんな無駄なことは出来なかった。
 やろう、やってくれるじゃないか。まんまと逃げられてしまった。
 薄暗い部屋には天井から落ちた蓑虫達が、群をなして倒れていた。蓑虫としてではなく、やっと人として死ねたのかもしれない。
 僕としたことが失敗した。さっさと魔物遣いの息の根を止めればよかった。彼の境遇に少しだけ共感してしまい、殺すのを躊躇ってしまった。そのせいで、この様だ。
 あの後、奴は〝天井に吊るされていた死体を全て落として〟その場から逃げ去った。
 やられたやられた、まさか最初から計算していたのだろうか。だったら、ただ狂気に溺れてるだけじゃないってことか。くそっ、まるで子供に馬鹿にされたみたいだ。狂人にはめられたと思うと、悲しくなってくる。


〝オカアサン……〟


 ……もし悪質眼鏡の言ってることが本当なら、奴も魔物遣いではないということなのだろうか。魔物遣いであって、魔物遣いじゃないということ。
 あいつがおかあさんは死んでないと思って、魔物として蘇らせたのだとしたら、あぁ……なんだか、無駄に共感してしまう気がする。
 ――何を言ってるんだ僕は、共感なんて出来るはずないだろ。奴は、産み出した。だが僕は違う、美夏はそもそも〝死んでないんだ。〟僕の前に再び現れた時に言ってたじゃないか、私は死んでないよ、ここにいるよって、魂だけになっても、ここにいるよって、言ってたじゃないか。
 乱暴に近くの死体が吹っ飛ばされていた。
 見ると、そこには何もないはずなのに、まるで透明人間がいるかのように、ベットリと血がなにもない空間で浮いていた。
「……あぁ、ごめんよ美夏。キミを汚してしまって、ごめんね。僕がもっとしっかりしていれば」
 慌ててハンカチで彼女についた血を拭おうとすると、美夏の手が優しく僕の手を掴んだ。
 大丈夫、おにいちゃんは悪くないよ。と彼女は僕に言った。何て優しい妹だろう、これのどこが魔物なのだろうか、そうだ。やっぱり僕は魔物遣いじゃない、彼女は生きてる。美夏は生きているんだ。



 逃げ去った魔物遣いを追うために、先ほどの蓑虫たちの大量落下が起こった部屋から出ようとした瞬間、物凄いスピードで蓑虫が迫ってきた。
 巨大なハンマーで石を割ったかのような音が、廃墟内に響く。放り投げられた蓑虫は美夏によって、破壊された。
 卵みたいに簡単に壊された蓑虫は、傍にいた僕も、そして美夏にも、中身をぶちまけた。
 汚らしい中身は僕の服を二度と使えないものにしてくれたが、そんなことよりも、美夏が汚れてしまったことの方がショックだった。自分のことよりも、美夏のことで僕はひどい怒りを覚えた。
 永遠のように長い廊下、その遥か先に奴はいた。先ほどの魔物遣い、首吊りした母親を魔物として産み出した男が、仮初めの母親に護られてそこにいた。


〝大丈夫よ、あんな悪い子。おかあさんがやっつけてあげるからね〟


 そんなことでも言われたのだろうか、奴が投げてきた蓑虫は僕の妹が難なく防いだというのに、男は余裕だこんなのと満面の笑顔だった。……あぁそうか、しまった。そうだよな、球は一つだけじゃないもんな。


 母親は、また蓑虫を投げてきた。
 今度の球は、やたらでかかった。生前、相撲でもやっていたのかと疑うくらいに、でかかった。それを、何百分の一ぐらいしかない野球ボールを投げる大リーガーの投手よりも速く投げてきた。だが、また先ほどのように、卵のように軽く粉砕する。驚くべきは、連投の速度。粉砕した瞬間に、また新たな蓑虫が投げられていた。それをまた、粉砕する。粉砕したら、また新たな蓑虫が投げられる。また粉砕、また蓑虫が、粉砕、また蓑虫が、粉砕。
 最悪だった、もしかしてこのために学校内に蓑虫を配置していたのだろうか。てっきり、狂気の遊びだと勘違いしていたのだが、そうだとしたら謝ろう。ごめんなさい、だから出来ればやめてほしい。
 粉砕、粉砕、粉砕、マシンガンでも打ち込まれてるかのように、美夏は僕の盾となって、当たったら僕も同じ死体になる蓑虫球を防いでくれていた。僕は黙ってその光景を眺めていた。何て貧弱な兄貴なんだろう、妹がこんなにも僕を護ってくれているというのに、僕は何も出来ないでいた。
 ……ん、まてよ? それだったら、僕は何処かに隠れればいいんじゃないか?
「んじゃ、悪いけど僕は校長室に隠れてるから、美夏は〝蓑虫を避けながら、魔物遣いを倒しに行ってくれ〟」
 そして、貧弱な兄貴は邪魔にならないように、校長室へと隠れた。
 よく考えてみれば、美夏が防いでいるのは僕がいるからで、僕がいなければ小柄でかつ素早い動きの美夏だ。〝避けるなんて造作もない〟ことなのだ。
 だから、少し罪悪感が芽生えたが、黙って校長室でことが終わるのを待つことにした。しまった、それならば、暇つぶしの本でも持ってくればよかったかな、と後悔した。
 後悔した瞬間に、僕はまた新たな後悔に襲われた。
 そうさっきと同じ、首が何かに絞められて体が持ち上がっていた。僕の足は宙に浮いていて、蓑虫みたいに揺れをおこそうとしている。
 横を見ると、先ほど蓑虫を投げまくっていたはずの母親が、そこにいた。
 瞳孔が網膜と一緒になってるかのような、スライム状になってグチャグチャした眼球と僕は目が合った。


「ワタシは、クビツリシタイがアルトコロにイドウデキルノ、そういうノウリョクナノ」


 面白いでしょ? 水商売の女みたいに甘い笑みを散乱して、彼女は僕の首を縄で絞めつける。
 息が出来ないを通り越して、首と胴体が離される感覚に陥る。あぁ、このままじゃ、僕は死ぬんだな、そう思い段々と僕は意識が遠のいて来た。
 あぁ――嫌だなぁ、僕、――死ぬのかなぁ。
 おにいちゃん、死ぬの?
 だって、今大ピンチじゃん。美夏は今離れた所にいるしさ、ここに来るまでに僕の首なんて簡単に絞まっちゃうよ。
 なんで?
 なんでって、そりゃそうでしょ。どんなに足が速くてもさ、あんな怪力の魔物だよ? こんな細い僕の首なんて、ここに来る前に簡単にボキッ、でしょ?
 そんなことないよ、大丈夫だよ
 なんでさ、なんでそんなことが言えるのさ。
 だって


 ギャヤアアアアアアアアアアアアアアアアッ。


〝わたしは、いつだっておにいちゃんのそばにいるじゃない〟


 絶叫する蓑虫大好きくんの母親、僕は危うく死ぬところだったので、朧気にしか見えないが、どうやら両腕をへし折られたらしい。先ほどまでは、廊下にいたはずの〝僕の妹〟に。
 僕を天井に吊り上げて、登っていたはずの母親は地面にひれ伏していた。美夏はどうやら先ほど粉砕した蓑虫たちの血を被ってしまったらしい、赤いシルエットとなって、透明人間は完全に輪郭を露わにしていた。
 赤いシルエットは母親の顔面を掴みあげると、先ほど僕らに投げられた蓑虫のように、剛速球で母親をぶん投げた。
 ぶん投げられた先のドアは簡単に粉々になって、母親は壁に激突する。その衝撃で全身の骨やら中身が滅茶苦茶になったのか、吐血までしていた。全身が粉々にならなかったのは流石だと思うが、ピクピクとしてるのを見ると、なんだか愉快だ。
 血だらけの美夏は最後にとどめを刺そうとしているらしく、血液の足跡を刻みながら、母親の元へと歩み寄っていた。僕はその光景を、ただ見ていた。


「ヤメロヨ……オマエ……」


 今にも倒れそうな足取りで、魔物遣いは僕らを止めようと向かってくる。
 だが遅い、どんなに急いでもどんなに急いでも、もう、無理だ。


「ヤメロヨ……オカアサンヲ……オカアサンヲ……ニドモ……コロスナヨ……」


 一度失ったから、だからこそ出来る悲痛の表情。
 眼球は懇願し、顔は恐怖に怯え、声は泣いていた。
 あぁ、やっぱり僕とキミは違う。
 お前、僕とは違うじゃないか。ちゃんと分かってるじゃないか。
 そこが決定的に違う。だから、さよなら。


 母親は粉砕された。


 頭は簡単に、大きな音もなく、簡単に、静かに、砕け散った。
 太陽の光を浴びた吸血鬼のように、残りカスはなく、灰となって消えて行った。


「オカア……サン?」


 つい、僕は笑ってしまった。
 こいつとは全然違うと知って共感出来なくなったからだろうか、魔物遣いの顔を見て、僕は爆笑した。
 美夏がいるのに、はしたない。
 だけど笑いは止まらない、もしかしたら僕がなるかもしれなかった結末だというのに、僕は笑っていた。
 それはおそらく、僕が幸せだからだろう。
 こいつにはもうなにもないが、僕には美夏がいる。人間って、自分より不幸なのを見て幸せになる生き物だから仕方ないよね。



 そして、魔物遣いは永遠の悲しみに包まれて、殺された。
 本当の母親と同じく、首を絞められて死んだ。
 蓑虫で満ちた廃墟内にいるのは、悪魔のように笑う鴉山鏡介だけだった。
 他はいない。誰もいない。
 魔物だって、いない。
 鴉山鏡介の妹なんて、本当はもういない。


 鴉山鏡介は、本当に魔物遣いではない。
 これは悪質眼鏡こと、草月薫も最初は気付かなかったことである。無論、彼が最後に鴉山鏡介に言った時は、ちゃんと知っている。
 鴉山鏡介は本当に魔物遣いではない。
 言うなれば、サイコキネシス。いわゆる超能力者と言われる者達に含まれる。彼は魔物遣いでもなんでもない、自身だけで不可解な現象を起こさせる能力者だ。異常者だ。魔物遣いよりも高度で、高次元の存在。だが彼自身はそんなことは微塵も思ってないらしい、彼は本当に妹がいると思っている。もしくは、自分が魔物遣いで、彼女を魔物と生き返らせたと最近は少しだけ疑ってはいるが、それだけである。彼は自身が超能力者と思ってはいない。いや、そもそも、彼が自身のことを超能力者だと知ってしまったら、この能力は成り立たないのだが。
 一年前のことである。鴉山鏡介は妹のことが好きだった。誰よりも誰よりも誰よりも、妹のことを愛していた。この世の全てより、この世にいるたった一人の妹を愛していたのだ。いわゆるシスコンと呼ばれる類である。シスターコンプレックス。そう、彼は異常な程に妹に愛情を注いでいたのだ。尋常じゃない愛情はもはや呪いと変わらない。
 彼の妹は首を吊った。
 学校の帰り、鴉山鏡介は高校生で彼女は中学生。
 高校の授業が終わり、彼女が通う中学校で彼女を待っていても帰って来なかったので、不安になって何度も携帯に掛けても出なかった。なので仕方なく、家に帰ると蓑虫みたいにぶら下がっている妹を彼は見つけた。
 夕方の茜が、部屋ごと彼と彼女を赤く染めていた。不思議と、それは血よりも赤く、人の中身よりも、赤く見えた。
 彼は一緒に遺書も見つけて、遺書の中も見たのだが、どうやらもう内容は覚えてないらしい。正確には、思い出さないようにしてるらしい。思い出してはいけないものだったからだろう。
 中には、彼が今まで向けた妹への愛がどんなものだったかを、涙ながらにして書き綴った内容が書かれていた。人は失ってから初めて後悔する。彼は初めて後悔した。いや、絶叫した。喉からじゃなく、心から、どうしようもなく絶叫した。
 涙さえも通り越して、悲しみさえも通り越して、彼が産み出してしまったのが、そう透明人間である彼女――に見せかけたサイコキネシスである。
 彼は柔らかな手が、自分の頬に触れている気がした。


「――美夏、そこにいるのかい?」


 ぶら下がった妹を前に、彼は何処にもいない妹へと歓喜の笑みを浮かべた。
 もちろんだが、透明人間はいない。妹は死んでいる。彼女は生き返ってない。彼女は透明人間という魔物になって生き返ってはいない。
 ただサイコキネシスで物理的にそう思えるようにしてるだけだ。
 美夏が自身の頬に触れてるように感じてるのは、サイコキネシスで触れてるように柔らかな衝撃を与えてるだけだし、足音もサイコキネシスで音を鳴らしてるだけだ。血だらけのシルエットだって、サイコキネシスで浮かせているだけである。もちろん、魔物を放り投げたのも、魔物遣いを放り投げたのも、蓑虫を粉砕したのも、全てサイコキネシスである。ギターケースから出てきたかのように見えたのも、廊下にいたはずの美夏が一瞬で校長室に移動したのも、全て、全て、そうである。全て、サイコキネシスが起こした現象である。
 そう、これは美しい夏のように危うい蜃気楼が見せた一時の悪夢、ただの陽炎だ。


「ごめんよ美夏、こんなに汚れてしまって。これもそれも、僕が不甲斐ないからだったね。ごめんね、美夏。家に帰ったら、お風呂に入ろうね?」


 恐怖さえ乾き、悪魔の嘲笑が聞こえるかのような静寂に包まれた、魔物が蠢いた夜。
 首を吊っていた母親は死に、その母親が生き返るのを信じていたのか、砂となった母親に何重にも何重にも包帯を巻こうとしていた息子も、美夏によって――いや正確には美夏の形をした鴉山鏡介のサイコキネシスによって、皮肉にも首を絞められて殺された。絞殺死体、最後は仲良く同じ死に方が出来たのだから、魔物遣いにしてはまだ幸福な方なのだろうか。だがこの男、鴉山鏡介は魔物遣いよりも高度な存在で高次元な存在であるが故に、どうしようもなく、どうすることも出来なかった。
 破綻という言葉が正しい。
 もし破綻というのが、ネジが一本外れてしまった状態であるならば、彼こそ相応しい者はいないだろう。
 ネジが一本外れるということは、蓋を抑えている金具が取れそうになっているということである。ようするに、カウントダウン。
 一本外れてる状態ということは、中身が零れている可能性もある。
 彼はまさしくそれだ。
 常識というネジが一本外れて、彼は無自覚にサイコキネシスを操ることで透明人間を作った。いやもしくは、魂だけの状態になった妹がいると思わせることが出来た。だが、中身は零れる。理性という金具はもう限界だ。外れてるのは一本だけじゃないのかもしれない、理性が完全に外れたら、あとは終わりしかない。人間性という中身が溢れ出したら、あとはもう、人間じゃない何かが代わりに騒ぎ出すだけだ。
 どうしようもなく、破綻は動き出してる。
 だというのに、彼は抱きしめていた。
 何もいない空間を、妹がここにいるのだと思えるようにサイコキネシスを起こして、彼は抱きしめている。
 本当の嘘吐きは自分さえも騙せるが、だとしたら彼は本当の嘘吐きなのかもしれない。果たして彼の嘘を暴くのは一体誰なのだろうか。


〝キミの能力名は――そう、〝出来損ないの真実〟が相応しい〟


 いや草月薫ではないだろう、草月薫は自分のために鴉山鏡介を利用することはあっても、出来損ないの真実を暴くことはしない、暴いたら利用出来なくなる。だから、彼は絶対にしない。
 となると、恐らく彼は一生自分を騙したままだろう、それが喜劇だとしても、破滅を塞ぐ唯一の方法なら、仕方ない。
「はははっ、ありがとう。こんな頼りないおにいちゃんでも、キミは優しく抱きかえしてくれるんだね」
 いや、もしかしたら脳味噌の何処かでは、覚えているのかもしれない。
 どうしようもなく、覚えているのかもしれない。
 本当の妹を殺した人物は、鴉山鏡介だということを。
「がんばるから、美夏が傷付かないようにおにいちゃんもがんばるからね」
 それが鴉山鏡介のどうしようもない虚像の限界。
 彼は超能力者になれたが、本当なら魔物遣いにもなれたはずなのだ。高度な存在で高次元の存在になれるくらいだ。それよりも下の存在なんて、簡単になれるだろう。だが彼はなれなかった。
 それは彼がおそらく、妹を殺したのは自分自身だと心の奥底では自覚してるからだろう。だから、彼は透明になったと思いこみ、サイコキネシスをおこした。魔物ではなく、サイコキネシスで彼女を作り上げた。
 縄でぶら下がった美夏の顔を見てしまった鴉山鏡介は、もう本当の美夏の顔を想像することは出来なかった。だから、透明なのだ。
 それが鴉山鏡介のどうしようもない虚像の限界。
 もしかしたら、首吊り事件を起こした魔物遣いを殺したときのあの笑いは、自分とは違い、そんなものを産み出した人間への哀れみだったのかもしれない。
 彼は自殺した母親をそのままの姿で具現化した。自分が拒否したことを、彼は馬鹿みたいにやってしまったから、愚かだと笑ったのかもしれない。
 恐怖さえ乾き、悪魔の嘲笑が聞こえるかのような静寂に包まれた魔物が蠢いた夜。
 誰もいない学校の廃墟内で、鴉山鏡介は誰もいない虚像劇をする。
 もしかしたら、首吊り事件を起こした魔物遣いを殺したときのあの笑いは、もしかしたら、自分への嘲笑だったのかもしれない。
 自分が殺してしまったのだという現実感と今までの幸せの記録を塗りつぶしてしまうほどの死に顔で、透明人間に見せるサイコキネシスしか出来なかった彼自身への、彼の虚像限界への嘲笑だったのかもしれない。
 誰にも向いていない優しさ、誰にも向いていない愛情、誰にも届かない涙。
 今も、そしてこれからも、永遠に未熟児のままの破綻を抱きかかえて、鴉山鏡介は誰もいない虚像限界を大事そうに抱きしめている。
 彼が死ぬまで、ずっと、ずっと抱きしめている。

この作品をはてなブックマークに追加この作品をはてなブックマークに追加


読み終えましたら、web拍手をお願いします。壁紙をプレゼントさせていただいております。

目次へ戻る