『これは永遠 ここは時間を忘れた場所』(2)
2
旅立ちの日までは、いつも夜は寝れなかった。
毎日毎日、旅立ちの支度をしていたのは、旅立つことに不安で怯える自分を誤魔化すための演技だったのかもしれない。
未知なる世界に行くことに興奮して、いてもたってもいられないと自分を偽ることで、自分の心を平静に保とうとしていたのかもしれない。だけど、所詮それは被り物の平穏で、夜になって暗闇に包まれれば、どうしようもなく本当の素顔と出くわすことになる。いつだって、素顔の自分は不安で泣いていた。
真夜中、ベッドの中で暗闇に抱かれるといつだって、素顔の自分を見てしまった。素顔の自分は膝にうずくまって、泣いていた。ひたすらひたすら、泣いて泣いて、泣いていた。
泣くことによって悲しみは消化されず、ただ蓄積していくだけなのに、おかまいなしに素顔の自分は泣いている。
そんな自分にかける言葉が見つからず、だからといって目を逸らす術もなくて、ただただ素顔の自分を見つめることしか出来なかった。どうしようもない現実を見ているしかなかった。
だけど、心の中ではこの暗闇を旅立ちの朝は温かく晴らしてくれると信じていた。
なんの保証もないし、確証もないのに、未知なる旅立ちの日を、信じていた。
きっと世界には希望がある。見たこともないような希望がある。今まで自分が信じていたことがバカらしいと思えるくらいの驚きが何処かにある。触れたこともないようなものに出会える。見たことないものに出会える。聞いたこともないものに出会える。
世界には、きっと自分を楽しませるものがある。
そう信じて、暗闇の中、今日も素顔の自分を凝視する。それがたとえ、逃れようのない未来の自分だとしても、目線は逸らさなかった。
それさえも受け入れてしまおう。
目の前の自分自身に、そう誓った。
◆
この村で起きた出来事を、全て、いきなり現れた謎の少年に話した(全てというのは、“真っ黒なおじさん”以外の全ての出来事ということ)。
謎の少年は、一生懸命に説明するぼくの話しを「へぇ」とか「ふぅーん」とか「あっそ」という三種類の言葉を使い分けて相づちしながら、聞いていた。正直、ぼくの説明はちゃんと耳から脳味噌に伝わっているのか疑問に感じたり、ぼく及びニコルの眉間のしわが寄ってしまうこともあったりしたが、とりあえず説明は終わった。
「旅立ちの日に、時間が止まってしまった。ふぅーん……しかも、この村から出れないと……」
重要なことはちゃんと理解したらしい。
かなり疑っていたので、思わず息をついて安堵する。
「ふぅーん……ふぅーん……」
物凄いサイズ違いのせいで余りすぎてる裾を、少年はブランブランと振り回す。
しかも、テーブルに両足をかけて、椅子が後ろにギリギリ倒れないように四つ足のうち前二つを上にあげている。
あきらかに、人の話を聞く姿勢でもなんでもないが、彼は希望をあきらめかけていたぼくらにとって、唯一の光の星なんだから、気分を害して光を失うようなことがあってはいけない。(ニコルは、その考えにはご立腹のようで、最初は力づくで情報を聞こうとしていたが)
場所は、神桜樹広場から移動して、ハルナの家の居間へと移動していた。
何処か落ち着ける所で話しをしたく、それならハルナの家が神桜樹広場から一番近いということで、彼女の家が採用された。
なので、ハルナも自宅の居間のテーブルに両足をかけられて少し嫌な顔をしてたりする。だけど、そこら辺は彼女らしく、ただ黙ってなにも言わないでいた。顔はどう見ても、嫌そうな顔をしているのに、なにも言えないでいた。
彼女らしいと言えば彼女らしいが、それはどんな人から見ても短所にしか見えないものである。
ハルナの家の居間は、ぼくの家の居間より広々としていた。
入り口から入ってすぐに、キッチンと家族で食事をするための食卓が用意されていて、その隣の部屋には、家族が団らんするための場所と思われる椅子四つと大きな長方形のテーブルが一つ用意されていた。
椅子は四つしかないのだが、部屋は四人以上いたとしても十分余裕があるほど広く、ハルナの家に入るのは、実はぼくとニコルは初めてだったため、記憶の中の自分自身の自宅を思い出して、少しだけ悲しくなった。
「それってさ……何気にオレッち大ピンチじゃない?」
口笛を吹きながら、外見から見たら余裕たっぷりの表情にしか見えない笑みを浮かべて、「オレッち大ピンチじゃない?」と言った。
そう思ったのはニコルも同じだったようで、「だったら、もう少し困った顔をしろよ」と、テーブル越しに面と向き合って椅子に座ってるぼくと謎の少年から、大分離れた部屋の隅で椅子に座って呟いていた。(ちなみにハルナはぼくの隣りに座っている。謎の少年に怯えているのか、ぼくの上着の裾を掴みながら)
ニコルの言葉を完全に無視して、謎の少年は言葉の続きを紡ぐ。
「だってさ。あんたらは、時間が止まる前にちゃんと飯食ったから、腹が減らないんだろ? だって、“ちゃんと飯食った状態で時間が止まってる”からな。でもさ、オレッちは腹ぺこの状態でこの村に来たわけよ。“腹ぺこの状態で時間が止まった”と言えるよな、おい。……それって、どうなのよ? ヘタしたら、死ぬんじゃないオレッち」
……あぁ、なるほど。
すぐに理解はしにくかったが、なんとなく分かった。
ぼくらは“お腹が空いていない状態で、この村の時間が止まってしまったから”お腹が空くことはないが、謎の少年は“お腹が空いている状態で、この村に入って時間が止まってしまったから”お腹が空いた状態でずっといる。(しかも、ここにある食べ物は動かすことが出来ないから、食べ物は食べられないという地獄付き)
でもそうなるとどうなるのだろう。
この村は永遠の停止を保っている。
永遠の停止になっているのは、8:59:55 a.m.に動かなくなってしまった人々だけじゃなくて、ぼくらにもちゃんと影響していた。
たとえば、疲れを忘れてしまったことも一つだし(どんだけ動いても疲れが現れない。あのひ弱なハルナが、この村にある手がかりを長い間飛んで探しても疲れなかったのだ)、眠くなくなったことも一つだし(ただし、眠らないというのは人間性を無くしたような気がするので、ぼくは無理矢理に眠るフリをする)、腹ぺこにならないのも一つだ。
それもこれも、疲れていない状態で、眠くない状態で、腹ぺこじゃない状態で、この村の時間が止まってしまったことが影響してるのだと思う。
果たして、それは人の命にも影響するのだろうか。
たとえば、謎の少年は今“腹ぺこの状態で時間が止まってしまっているが”だけど、“生きている状態で時間が止まっている”ことでもあるため、死ぬことはないように思える。普通ならなにも飲まず食わずにいれば、死んでしまうが、ここは時間を忘れた場所。死さえも、忘れてしまうことが出来るんじゃないだろうか。
「あぁーあぁー、あんたの考えてること分かったぞ。おいおい、おいおいおい、それでも困るんだけどなオレッちは。だってよ、それってよ、“永遠に苦しみが続く”わけだろ? 死なないということはさ、時間を忘れたということはそういうことだよな? それでもオレッちは嫌だぜ。ものすごい嫌だぜ。オレッちは、嫌なことはなにがなんでもしない性分なんだ。生き方なんだ。そんな苦しい状態をずっと続けるくらいなら、大事にいつも持ち歩いている秘密のポエム帳を焼き払って死んでやるね」
……分からなくもないが、いや本当なら非常に共感出来ることであるはずなんだが、何故だろうか。彼が言うと、ものすごいワガママを言っているように聞こえるから、不思議だ。
ちなみに、彼が最後に言ったことは、ポエム帳を焼いてから死ぬということなのだろうか。それとも、ポエム帳を焼くことによって死んでしまうということだろうか。恐らく前者だと思うが、分かりにくい文法だった。
「細かいことを心の中でブツブツ文句言ってんじゃねぇよ、ネクラ」
心に一万のダメージ。
人生で初めてネクラと言われたのと、ブツブツ文句言ったのがばれたことにより、大きなダメージを受けてしまった。あと部屋の隅に座っているニコルが、何故かぼくがネクラと言われたことに少々ウケているようで、なんだかむかついた。
「たとえ体が死ななくても、ずっと空腹でいることによって心が死んでしまいそうだからな。永遠に空腹なんてアリエナイぜ。……ん、でもこの場合だと、心も死ぬことはないのか? “心が生きている状態で、時間が止まっている”からな。いやいや、今考えるべきはそんなことじゃなかった」
そう言うと、謎の少年はテーブルにかけた両足を上にあげて、そのまま後ろに倒れそうに──なるかと思ったが、ぼくから見て右に重心を傾けて(残された椅子の足は一本だけ)、キレイな円を描いて、最後は四つ全部の足を元通りに床につけて着地する。
……ようするに、意味のないパフォーマンスである。
そして、謎の少年はダボダボした裾で見えない両手をつきだして、こう言った。
「お前、“真っ黒なガキ”に会ったことないか?」
一瞬、思考を失う。
それは思い出したくもない光景を、思い出させたからだ。
“さぁ、なんでも願いを言ってごらん?”
呼吸すらも忘れてしまったかのように、心臓は無駄に鼓動して、肺は苦しみを覚える。
「そんなの、おれらが知ってるはずねぇーだろ」
部屋の隅にいたニコルが、急に立ち上がって怒鳴りつける。
その怒声に目を覚まし、ぼくはどうにか平静を築く。
「……んぅ、別にあんたに言ったわけじゃないんだが……んぅ、なるほど、今の質問で大体のことが分かったぞ。まぁそんなことはどうでもいい話だな」
謎の少年は、いきなり飛び上がった。
突拍子もなく、なんの前フリもなく、いきなりにあまりにもいきなりに、膝をバネのように扱い、鮮やかに後ろに宙返りした。
最初は、なにが起きたのか分からなかった。
それは、謎の少年が座っていた椅子が、床から生えてきたと思われる黒い針のようなものに貫かれても、なにが起きた理解するのに数秒の時間を有した。
「……はい?」
貫かれた椅子の後方に着地した謎の少年は、こう告げる。
「安心しろ。“真っ黒野郎”が殺したいのは、きっとオレッちだけだ」
その言葉を聞いて安心を得るのに、ぼくらはどれくらい果てしない時間を費やせばよいのだろう。
もちろんだが、答えは出なかった。
◆
最初に、村の外の空を見たとき、あまりにもその空は美しすぎて、涙が止まらなかった。
見たこともない高くそびえ立つ山にかかる雲が、太陽の日差しを浴びて、神々しいと思える光の反射を交差させ、人間じゃ絶対に描けない素晴らしき風景画を描く。
山の下にある森に囲まれた湖には、雨上がりの晴れ晴れとした青い、きれいに青い空を映し出していた。これもまた、太陽の日差しを浴びて、眩しくて美しい光を反射させる。
誰もいない静かな丘で、そんな光景を見てしまった。
村の中では絶対に見れなかった光景。鳥籠の中ではアリエナイ光景。永遠という筺の中では、見ることが出来ない光景。
思わず両手を伸ばす。だけど届くことはない。
当たり前だ。伸ばした両手よりも遥か向こうに、美しき光景は広がっている。この壮大な光景を、人間の掌ごときが掴めるはずがない。
あまりにもそれが悔しくて、当たり前のことなのに悔しくて、思わず、背中に生えた翼を広げた。
もう今では偽りの翼となってしまったが、それでもなんの躊躇いもなく翼を広げた。
たとえこれがイカロスと同じことになろうとも、それでもいい。
この光景には、まだ続きがある。
雲がかかった山の向こうには、さらにデカイ山が見えた。そのデカイ山の向こうには、またさらにデカイ山が、さらにさらにそのデカイ山の向こうにはきっとそれ以上にデカイ山が、いやもしくは山ではなく湖か、それとも見たこともないようなものがある。
そう信じて、躊躇いもなく翼を広げた。
翼を広げることは罪なんかじゃない、死を覚悟することが罪なんだ。
もっと、もっと、もっと見てみたい。
もっと知らない世界を見てみたい、知らない世界が奏でる音を聴いてみたい、知らない世界が映し出す芸術に涙したい。
誰にも邪魔されることなく、誰もいないこの場所から、この静かな丘から、翼を広げて飛び立った。
◆
「おい……お前、現状がどういうことになってるか分かるか」
ハルナの家から出て、直視するしかない光景を前にして、ニコルは言った。
もちろんだが、なんでこんな現状になったのかも、この現状にどうすればいいのかも、ぼくには答えが出なかった。
“カタルコトハナイ イツマデモココニイレバイイ”
ハルナの家を出ると、神桜樹広場に繋がる石畳の道に出た。ここから神桜樹広場まではそう遠くない。
この村は時間が止まったはずだ。時間を忘れたはずなんだ。
今の所、この村で動けるのは「ぼく」と「ハルナ」と「ニコル」、そしていきなり現れた謎の少年だけ、この四人だけなはずだ。
だけど、目の前に広がる光景はそれを覆した。簡単にルールを、ぶち壊してくれていた。
「……なんなんだ、こいつら」
ニコルはぼくの隣で、驚愕していた。ハルナは、ぼくの背中にしがみついて震えていた。ぼくは、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
黒い人たちが歩いていた。
人たちとぼくは称したが、それはあくまで“人型をしているだけ”で、どこをどう見ても人には見えなかった。
全身が半透明の黒に染められていて、まるで亡霊が歩いているように見えた。いやもしかしたら、こいつらは本当に亡霊なのかもしれない。だが、それだとwhy? という疑問形が浮かぶ。そもそも、時間が止まるという現象自体がwhy? であるのだが、だとしても、いきなりこんな怪しい集団が現れるなんて、物語として急過ぎないだろうか。もう少し、登場人物の心情も考慮してほしい限りだ。
黒い人たち……性別も分からず、どれも同じ形をしている。二メートルぐらいと思われるほどでかく、黒い人たちが通り過ぎるたびに、ぼくらは彼らを見上げることになる。ぼくらの中で一番身長が高いニコルで、百七十ぐらいなので当然だろう。
黒い人たちは、ぼくらにはなにもせず、気味悪く“カタルコトハナイ イツマデモココニイレバイイ”とブツブツ言って歩いていた。まるでその歩き方は、悪いことをして捕まってしまって働かされてる囚人のように見えた。
「と、とりあえずさっきのガキ見つけようぜ? なんだかおれらには話しがチンプンカンプンだが、あいつはなにか知ってるようだったしよ」
ニコルの提案を、ぼくとハルナは頷いて了解する
一体全体、あの謎の少年が何者なのか、謎の少年はなにを知っているのか、謎の少年がなにを出来るのか。
ぼくには全然分からない。どれだけ脳味噌の脳細胞を働かせても、悠久の時間をその問いの答えを求めるために使っても、答えは見つからないだろう。
分からない故に、彼を捜すしかない。
「んじゃ飛ぶぞ。さっさと翼を広げろ」
ニコルは大きい声で叫んだ。
……ぼくは、つい動揺してしまう。……飛ぶ? ……飛ぶって、空を? ……翼で?
ニコルはぼくを置いて、先に翼を広げて、空へと上っていった。
その光景をぼくはただ見つめる……だけだった。
「大丈夫……わたし……飛べる……」
ふと、ぼくの足は急に地面から離れていた。
突如のことにぼくは足下を見ると、だんだんとぼくは地面から離れていった。
体はまるで風船にでもなったかのように、風に流されるかのように、空へと上っていった。
「イスケくん……男の子なのにちょっと軽すぎだと思う。……軽すぎだよ」
ぼくの後ろで、ハルナは呟く。
気がつくと、脇の下からハルナの腕がぼくを抱きしめていた。どうやら、ハルナがぼくを翼で持ち上げたらしい。ハルナの白くて、彼女の体には不釣り合いな大きな翼が羽ばたいてるのが見えた。
彼女はぼくの体重について、少し不満があるようだが、それならぼくは自分が空を飛べないのが不満だ。助けられてなんだが、ぼくはちょっと悲しかった。
「おい、あれじゃねぇか?」
ニコルはある方向に、指を差した。
それは、神桜樹だった。
神桜樹の周りの広場にも、黒い人たちはうろついている。ただ先ほどぼくらが見た黒い人たちと違うのは、彼等はただ歩いているだけじゃなかったこと。
同じく神桜樹広場にいるダボダボなコートに、ダボダボなズボン、長すぎるマフラーをつけたあの少年に、攻撃を仕掛けていた。
「……な、なんでだ?」
ぼくらにはなにも反応を示さなかった黒い人たちは、何故か謎の少年に対しては、敵意ならぬ殺意を持って行動していた。
ある者は、拳を。ある者は、蹴りを。ある者は、体全体を使った体当たりを。ある者は、石畳を引き剥がして投げていた。ある者は、同じ仲間でさえ投げていた。
その行動には全て殺意がこもっており、謎の少年は軽快な動きでそれらを全てかわしていた。ある者が繰り出したパンチを避けて、ある者が繰り出した蹴りも避けて、体当たりなんて避けるだけじゃなく足払いを食らわせる余裕もあったり、石畳や黒い人を投げられても、むしろそれを掴んで遠心力を利用してると思われるような円を描いて逆に投げ返していた。
妙に戦い慣れていた。
謎の少年の周りには、無数の黒い人たちが集まって、謎の少年に向かって全員攻撃していると言うのに、謎の少年は一歩も引かず、いやむしろ逆に押していた。
黒い人たちは、まるで爆弾でも投下されたかのように次々とふっ飛ばされていく。体格からしても、数からしても、圧倒的に黒い人たちの方が勝っているはずなのに、謎の少年はそんなの無駄だと嘲笑うかのように、彼等をぶっ倒していた。
「おれ……あんな奴に蹴られたのか」
あまりの出来事にぼくらは呆然としていた。目的地がすぐ見つかったのに、すぐ動かないのは愚の骨頂だったが、このような出来事に慣れていない、いや慣れるはずがないのだから仕方がないだろう。ニコルなんて、あんな化け物に蹴り食らわされて、よく生きていたなと自分の悪運に感謝してるらしかった。
「は、早くあの子の所に行こうよぉ……」
ただ呆然と見ていたぼくらより冷静だったらしいハルナの言葉により、ぼくとニコルは本来の目的をようやく思い出す。
「……あ、あぁ、行こう。あの少年の所へ」
ハルナに正されたのが、なんだか少し悔しい気もしたが、彼女に持ち上げられているくせにそんなこと思うのは、生意気を通り越して最低にしか思えないので、ぼくは彼女に感じた少しばかりの不満をすぐに取り払った。
そして、ぼくらは謎の少年へと翼を羽ばたかせて向かう。
気持ちに迷いがあったかと言われれば迷いはあったし、逃げたいという気持ちがあったかと言われれば逃げたかったし、目も背けたかった。だけど、ぼくには翼がなくて、決定権なんて一つもなかった。ぼくはハルナの翼に身を任せて、ただ謎の少年の元へと向かうしかなかった。
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