『EMOTIONAL NOTEBOOK』

著/キセン

 まっしろな自由帳の最初のページ。その片隅に悲しみを描く。それで気が済んだので、わたしは自由帳を閉じて眠った。けれど、悲しみはひとりでに大きくなっていって、まずページ全体を塗りつぶして、それから自由帳を包む。わたしが起きるころには、悲しみは部屋全体を覆い尽くそうとしていた。/ わたしはあわてて消しゴムで悲しみを消そうとした。けれども、消すそばから悲しみはふくれあがっていって、わたしに襲い掛かってくる。必死で逃げようとしたが、部屋の扉はすでに悲しみによって閉ざされていて、出ることができない。消しゴムではもう追いつけないと思い、ドアと壁の隙間に入り込んだ悲しみを爪で剥がそうとするが、そもそもそれが間違いだったのだ。爪と皮膚のあいだから入り込んだ悲しみは、瞬く間にわたしの身体じゅうに広がり、そして次は心を染めていく。そして、わたしのすべては。……// ゆっくりと眠りから醒めたわたしは、膜がかかったように曖昧な世界で、何かに衝き動かされるように自由帳を手に取った。そして悲しみで塗りつぶされたその最初のページに小さく描く、殺意を。//「きもち帳」461文字


(※フルパッケージ版にTEXT版が入っています)

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