『KAI-ROU』

著/キセン

 まず手元にある〈小説〉を壊してみてください。大丈夫ですから、そう、叩きつけて、卵を割るように。中からふたつ出てきましたか? それが〈物語〉ですね。ああ、すばらしい、それはかなり純度が高い。それを眼球のかわりにするのです。大丈夫ですから。さあ、右の眼球を外してみましょう。ゆっくりと瞼を開いて、その隙間から指を差し入れて、そのままずっと押し続けると眼球が出てきます。外側からゆっくりと、視神経を爪で切断していってください。いいですか。はい、よくできました。では、左眼も。/ はい、すばらしい。あなたが眼球を外している間に、私が〈物語〉をカッティングしておきました。これであなたの空虚にもうまく当てはまるはずです。ここに切断した視神経を添えて、うまく挿し込むとぷち、と音がします、そう。はい。一本ずつ。間違えないように。右、入りました。少し休憩しましょうか。/ はい、以上です。これで、邪魔なものは見えなくなりました。あなたの視界には、これから豊饒な〈物語〉だけが写るはずです。よかったですね。――え? もし、この〈物語〉に飽きてしまったら? そのときは、また私のもとを訪れてください。まだまだ〈物語〉が入った〈小説〉が、あなたのなかには眠っているはずですから。//「回廊」522文字


(※フルパッケージ版にTEXT版が入っています)

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