『ODIN』

著/痛田 三

「オーディンが出たぞ!」/ そんな声がスピーカーから投げかけられるのは、決まってセンター試験も間近のころ。だれの声かは分からない。が、机にかじりついている受験生たちにとって、それは開始の合図くらいの意味しかなく、授業中だろうと、小テスト中だろうと、声がすればお構いなしに体育館の方へと駆け出していく。/ 目指すは「ユグ」と呼ばれるトネリコの木。/ そこに現れたオーディンが目当て。/ 先陣はユグにたどり着くなり、すかさずオーディンから服飾物をひったくる。一番人気は第二ボタン。取り逃した者は恐る恐る髪の毛を毟るはめになる。後に、これらは試験時のお守りとして重宝される。/ やがて、一足遅れの二年、野次馬目的の一年生たちも合流し、彼らが本格的にオーディンを囲み出すころ。ぞろぞろとやってきた教師たちが、人だかりをかき分け、揉みくちゃにされた〈かつての教え子〉を降ろし、警察に電話をかけると、ものの数分でこの宴はお開きとなる。//「進学校の風景」406文字


(※フルパッケージ版にTEXT版が入っています)

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