2005年11月17日

◆『戦天国-夜の章-』の紹介 このエントリーをはてなブックマークに追加

 引き続き、『戦天国-夜ノ章-』の紹介をします。
 これは秋山真琴による青春ファンタジィ小説で、第四回文学フリマで頒布するバージョンは、初回限定版とされDVDケースに収納されています。本自体はB6版で28ページのコピー誌です。原稿用紙に換算すると約30枚となり、短めの短編小説と言えます。また初回限定版では、夏コミでも頒布した『竜の見る夢(体験版)』をおまけしています。ジャケットイラストは『回廊』第五号で「ワイヤードを赤メガネで」を描いてくれた捨木白瀬くんに頼みました。
 300円と他の本に比べ値段が高くなっていますが、装丁に手間暇とお金が掛かっているからと思ってください。
「続きを読む」をクリックするとジャケットイラストの一部と本文の一部が読めます。


 言語を解し、火を操り、力量にではなく技能に頼る人間は、それ故に他を制したが、その一点において弱みを作ってしまった。つまり、人類は全体の平均的な強さと引き換えに、個人が持ちうる能力を大きく減じさせてしまったのではないか。
 鳳凰寺鴛鴦という、先祖帰りに成功し不死鳥となった先人を参考に、百野学院の生徒は日々、厳しい鍛錬を経て、野性の強さを得ようとしている。
 華久楽雅を前にして、百野学院の男子生徒は、清々しささえ感じさせる口調で言い放った。
「待ってたぜ、戦闘役が出張ってくれるのをさ」
 葛篭タエコと名乗った相手は男子より頭三つ分は小さかったが、彼よりも背の高い武器を持っていた。
 タエコが前に出る。それに合わせて男子も前に出る。
 戦場において、前に出るのは、相手を倒すためだが、足を踏み出した分、自身が相手に倒されるというリスクを負うことにもなる。
――足捌きに迷いがない。自分の身長より高い武器を扱っていて、この身体制御。こいつ、やるな。
 男子が悦びに笑みを浮かべた瞬間。
 それは来た。
 目にも留まらぬ早業。
 一寸の迷いもない突き。
 神速の攻撃をしかし、彼は避けた。矛槍使いたちとの闘いの経験が彼を動かしていた。槍による攻撃の定石、およびその躱し方。
 槍の先端が回転する。十字に別たれた先端が、伏せることで攻撃を回避した男子の首を狙う。が、槍は詰襟の布地を僅かに切り裂いただけで、彼の首自体に傷を作ることは出来なかった。
――勝機!
 男子は脚に力を溜める。
「獣意・鹿」
 瞬間、男子の鍛えこまれた精神に野性の炎が灯る。
 物質的な筋肉に限界は存在するが、精神力に上限は存在しない。男子は無限の疾走力を得て、拳に全てを乗せて繰りだした。タエコの身体を衝撃が襲う。
「なっ……!」
 腹部に必殺の一撃を叩き込まれたはずのタエコは、なんら動じることなく立っている。
「お前も獣意を? いや、内功かっ!?」
「否。私に必殺技はない。ただ単に強いだけだ」
 タエコはさらに一歩踏み出すと、ゼロ距離の射程で、男子を殴りつけた。風が巻き上がり、男子は飛んだ。

| 投稿者 : 秋山真琴@代表 | 投稿時刻 : 2005年11月17日 23:41

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